胸が熱くなった片山晋呉の謝罪ツイート “国民の代表”として決意の最終R

2016年08月20日 10:35

五輪

胸が熱くなった片山晋呉の謝罪ツイート “国民の代表”として決意の最終R
第1ラウンドを「プレーする片山(AP)
 8月14日午前3時5分、リオデジャネイロ五輪に出場していた男子ゴルフの片山晋呉(43=イーグルポイントGC)が自身のツイッターにこうつぶやいた。
 「本当にすいません。明日はオリンピック最終日のゴルフ精一杯やってきます!!」

 リオデジャネイロ時間で13日午後3時5分。片山が第3日のラウンドを終えた直後のことだ。

 第1日が74、第2日が75。片山は風の強いリンクスに手を焼いた。第3日は77を叩いて最下位に沈んだ。日本ツアーで4回も賞金王に輝いた男にとっては屈辱的なことだ。悔しかっただろう。情けなかっただろう。そんな状況の中で、片山はまずファンに謝罪する行動を選んだ。43歳のベテランの気持ちを想像して胸が熱くなった。

 五輪はなぜこれほどまでに人を引きつけるのか。何度も語られていることだが、五輪が世界最高の大会なのかという点においては疑問が残る。コンディショニングのためには選手村で共同生活するよりもホテルで過ごした方が合理的だ。五輪のためにルールを変更するという本末転倒の例もある。それでも選手は4年に1度の試合に全精力を注ぎ、見ている人はその2週間に熱くなる。

 母国に対する帰属意識や愛国心。自国の代表選手に対する同族意識。つまり選手を「私たちの代表」と考えているから人は五輪にのめり込むのではないだろうか。裏返せば選手は「みんなの代表」「国民の代表」という思いを背負うから五輪が特別な舞台になるのではないだろうか。

 五輪開幕前、ゴルフの関係者からは「団体戦なら盛り上がるのに」という声を頻繁に聞いた。しかし試合形式はそれほど大きな問題ではない。なぜなら個人戦だろうと、団体戦だろうと、見ている人は選手を「私たちの代表」と見なしているからだ。日の丸を付けていれば、日本人はその選手を「私たちの代表」と考えて感情移入するものなのだ。

 リオデジャネイロで片山はそのことを強く感じたのだと思う。開会式の後には「細胞が震えた」とつぶやいた。マスターズで4位になったアスリートが五輪の存在の大きさに初めて気づいたのだ。日の丸と「JAPAN」のロゴを付けてラウンドし「みんなの代表」という思いを強くしたのだ。だから、ふがいない成績を謝罪せずにいられなかったのである。

 特別な決意を持って臨んだ最終ラウンド。片山は66をマークした。通算8オーバーで54位で終戦。ともに戦った池田勇太(30=日清食品)は通算3アンダーで21位だった。成績は不本意かもしれないが「私たちの代表」として立派に戦い抜いたと思う。

 2人ともメダリストにはなれなかった。しかし日本ゴルフ界で初の「オリンピアン」となった。まだ理解できないかもしれないが、それが尊い称号であることを胸にとどめておいてほしい。 (福永 稔彦)

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