生きたドーハの悲劇の経験

2018年07月02日 10:30

サッカー

生きたドーハの悲劇の経験
ドーハの悲劇…号泣する柱谷哲二(中)。右はオフト監督 Photo By スポニチ
 【大西純一の真相・深層】日本代表がW杯1次リーグ最終戦でポーランドに0―1で敗れたが、2大会ぶりの決勝トーナメント進出を決めた。同時刻のセネガル―コロンビア戦で、コロンビアが1点取った情報を聞いた西野監督が、0―1のまま終わらせればフェアプレーポイントの差で決勝トーナメントに進出できることから、約10分間そのままボールをキープする指示を出した。勝てればいいポーランドも積極的に攻めてこなかったので、日本が失点する可能性は低かった。セネガルが反撃して追いつく危険性はあったが、西野監督の勘が当たって狙い通りになった。
 セネガルとコロンビアが“談合”して引き分ければ、両国がそろって決勝トーナメントに進出できる。国際大会ではたまにあるシチュエーションだが、コロンビアが手を抜かないことを読んだ上での判断だった。

 日本が試合終了まで全力で攻めたらどうなっていただろう。ポーランドにカウンターから点を取られてリードを広げられた危険性もある。以前、少し似たような状況で痛い目に遭ったこともある。93年10月のドーハの悲劇だ。94年W杯米国大会アジア最終予選。集中開催方式で戦い、日本は最終戦でイラクに勝てばW杯初出場を果たすところまできた。しかし、2―1でリードしながら、アディショナルタイムにイラクに追いつかれ、あと17秒で韓国に出場権をさらわれた。

 ショートコーナーから簡単にクロスを挙げられて決められたが、その直前、リードしている日本は積極的に攻めていた。引き分けに終わったとき、「リードしているのになぜ意味もなく攻めるのか」と、逆に積極的に攻めたことが批判された。「大会に出場する目的は何か」その試合だけでなく、もっとトータルで戦い方を考えることを教えられた大会だった。

 大会直前に監督が交代するなど、今大会は悲観的な見方が強かった中で、日本は初戦でコロンビアに2―1で勝って関心を集めた。「大会出場の目的」を考えれば、決勝トーナメントに進出するためにベストを尽くすのが当然だろう。攻めに出て失点して決勝トーナメント進出を逃していたら、西野監督は「何もわかっていない」と批判されたはずだ。

 西野監督もドーハの悲劇にはアシスタントコーチとして参加していた。いろいろなことが日本の財産として積み上げられている。そして今回決勝トーナメントに進出してベルギーと戦ったことが、日本サッカー界の大きな財産になる。あの10分間が正しかったかどうかは、後の人が判断すればいいことだと思う。(専門委員)

 ◆大西 純一(おおにし・じゅんいち)1957年、東京都生まれ。中学1年からサッカーを始める。81年にスポニチに入社し、サッカー担当、プロ野球担当を経て、91年から再びサッカー担当。Jリーグ開幕、ドーハの悲劇、ジョホールバルの歓喜、W杯フランス大会、バルセロナ五輪などを取材。

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