“富山のビッグ3”向は銀、男子90キロ級頂点あと一歩も代表争い一歩リード

2019年08月30日 05:30

柔道

“富山のビッグ3”向は銀、男子90キロ級頂点あと一歩も代表争い一歩リード
<2019世界柔道選手権4日目>男子90キロ級決勝、優勝を逃し天を仰ぐ向(右)(撮影・会津 智海) Photo By スポニチ
 【柔道・世界選手権第5日 ( 2019年8月29日    東京・日本武道館 )】 男子90キロ級は個人戦初出場の向翔一郎(23=ALSOK)が、決勝でノエル・ファントエント(オランダ)に敗れて銀メダルに終わった。大会ごとに優勝者が猫の目のように変わる男子屈指の激戦階級の頂点には届かなかったが、来年の東京五輪代表争いで大きくアピールした。一方、女子70キロ級で3連覇を狙った新井千鶴(25=三井住友海上)は3回戦でポルトガル選手に敗れた。女子は5日目で初めてメダルが途切れた。
 型破りでひょうきんな男が号泣した。負けが決まり、畳を下りると山本一歩コーチの前でしゃがみ込み、涙腺が決壊した。2年前の選抜体重別選手権。初優勝してリオ五輪金のベイカーと比較された際に「(俺が)上回っているのは顔」とうそぶいた向が、本気で世界一を目指した証拠だった。

 「相手がバテた瞬間に、もういけると思ったし、どうやって投げようかなと頭に浮かんでしまった。一瞬の隙だと思う」。柔道人生を通じてのテーマは我慢。カッとなりやすく、不用意に技を仕掛けては逆に投げられ、成長の足かせとなっていた。この日、準決勝までオール一本。豪快に勝った試合より指導3を引き出した3回戦と準決勝が成長の跡だ。

 だが好事魔多し。決勝の相手は昨年11月のグランドスラム大阪で完勝した相手。心の隙が体にも伝染し、大外からの小内刈りを防御しきれなかった。「こらえられない技ではない。慢心だと思う」と素直に認めた。

 日大4年だった17年、度重なる遅刻をとがめられた金野潤監督(全柔連強化委員長)に逆ギレして、退部処分となった。寮を追い出され、アパートで一人暮らし。食事や大学での稽古相手を全て失い、「それが当たり前ではないと感じた」。同年11月の講道館杯に勝って部に復帰。畳を離れれば耳にダイヤのピアスをつけ、試合ではガッツポーズ。型破りな面は残るが、本気で五輪を目指す覚悟は固まった。

 相撲の朝乃山、バスケットボールの八村と同じ富山出身。「8月29日以降は向フィーバーにしたい」と意気込んでいたが、スターへの仲間入りは先送り。それでも、ベイカーや昨年銅の長沢ら、群雄割拠の90キロ級で一歩だけ抜け出した。だが本人は「ゼロからだなと思う」と言った。涙に濡れた銀メダルが、向の心の隙を全て埋めた。

 ◆向 翔一郎(むかい・しょういちろう)1996年(平8)2月10日生まれ、富山県高岡市出身の23歳。4歳から柔道を始める。高岡第一から14年4月に日大入学。17年に選抜体重別、講道館杯で優勝。18年2月のグランドスラム・パリ大会でワールドツアー初優勝し、同年は世界選手権団体戦代表に選ばれた。ALSOK所属。左組み。得意技は内股。1メートル78。

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