【高校ラグビー開幕直前連載】トンガ人留学生のナイさんが監督で花園に帰る
2020年12月23日 07:00
ラグビー
国際協力機構(JICA)を通じて05年に来日した。日本航空石川(当時は日本航空二)の留学生1期生だった。その年、フランカーとして花園初出場に貢献し、今は母校を率いる。サクセス・ストリーである。
掲げるラグビーは「見ている人が楽しいラグビー」。オフロードパスも使って展開を図る。27日に黒沢尻北(岩手)と対戦する。パス重視の戦術は、バックスが伝統の母校・天理大の影響が大きい。座右の銘の「感謝」も、日本での生活で学んだもの。ことあるごとに、選手には「今、ラグビーができるのは、親、学校のおかげだよ」と伝える。
プロになるために日本にやってきた。だから、大学4年時に母校の恩師からコーチを打診された時は「ガイジンだし、話すのもうまくないし、ありえない」と断った。しかし、その後、決定的な膝の故障をしたことで、考えが変わった。「これまでの経験を後輩に伝えたい」。石川に骨をうずめる覚悟を決めた。
前任の小林学校長(51)は、早くから指導者の資質を見抜いていた。天理大に進む前、トンガへの帰省に同行した時のことだ。「彼の親戚のおじさんが食事前のお祈りでこう話したのです。シアオシは3年ぶりに帰ってきたのに、異国に染まらず、以前と変わらず朝から農作業を手伝ってくれた、と」。人間的な温かさは指導者向きだと確信した。実際、学校職員として石川に戻った12年からの寮監、コーチとしての働きは申し分なかった。県外遠征はバスを運転した。骨身を惜しまず働く教え子に、今年過去最高の8強の更新を託した。
ナイさんが切り開いた道は、毎年1人の留学生という形で続き、今はNo・8パトリク・ヴァカタ(3年)が歩む。日本の言葉、文化などさまざまな教えを、ナイさんから聞いてきた。だからだろう。誓いの言葉は「人一倍頑張ります」という泥臭い言葉だった。 (倉世古 洋平)
※花園出場の全63校選手名鑑は、スポーツニッポン大阪版12月26日紙面で掲載予定(開幕前日のメンバー変更は反映されていません)。遠隔地の方もヤフーショッピングで購入できます。
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