【玉ノ井親方 視点】千秋楽の賜杯争い「勢いは若隆景にあるように思えるが…」

2022年03月26日 20:09

相撲

【玉ノ井親方 視点】千秋楽の賜杯争い「勢いは若隆景にあるように思えるが…」
<大相撲春場所14日目>貴景勝を寄り切りで破った若隆景(撮影・坂田 高浩) Photo By スポニチ
 高安は勝負を急いでしまったようだ。初賜杯が目の前にちらつき始めているのだから、仕方がない部分はある。
 正代戦。すぐに左上手を引いて右を差し込んだ。がっちり上手を取れたことで、力を出し切れると確信したのだろう。迷わず一気に前に出た。その判断は間違っていない。相撲は流れが大事。あの場面でひと呼吸置いていたら、逆に形勢逆転されていた。

 ただ、寄っていく姿勢が悪かった。上体に足がついていかず、相手の体にかぶさるような形になってしまった。そのため、正代に土俵際でひと腰落とす隙を与え、すくい投げを打たれてしまった。もっと左を引き付けながら、相手の差し手側に寄っていれば、結果は違っていたはずだ。

 一方の若隆景は非常にしぶとい相撲を見せた。貴景勝の一気の出足に、土俵際までいったんは押し込まれる。しかし、大関が勝負を決めようとはたきにきたところを、下半身の強さで耐え、体勢を立て直す。そのまま前に出ながら右を差して寄り切った。
 見ている方からすると、大関が安易にはたいたように思えるが、土俵際であれだけ体勢が崩れていると、普通は一発で落ちる。貴景勝もいけると思ったはずだ。ところが、若隆景のしぶとさはその想定以上だった。今場所の若隆景は土俵際で攻め返す力が際立つ。

 これで2人が2敗で並んで、千秋楽を迎えることになった。ただ、14日目の黒星は精神的にこたえるものだ。過去の高安を振り返ると、1つ負けると次の相撲がぎこちなくなることが多かった。勢いは追いついた方にあるように感じられる。若隆景には、ここ一番の勝負強さもある。

 だが、勝負事はゲタを履くまでわからない。とにかく、高安は開き直ることが大事だ。結婚して子供もできて、順風満帆の生活を送れているのだから、もし優勝を逃したとしても、悲観することは何もない。そう覚悟を決めて、攻めることだけを考え、自分の相撲を取り切ることだ。例えこの日の正代戦のように、土俵際で逆転負けを喫してもいいではないか。攻めなければ勝機は見えない。負けることを恐れず、突き進むしかない。泣いても笑っても残り1日。まずは、シンプルに考えることだ。(元大関・栃東)

おすすめテーマ

2022年03月26日のニュース

特集

スポーツのランキング

【楽天】オススメアイテム