【内田雅也の追球】今年も阪神の命運握る岡田采配 作戦でリズムやつながり生む手腕

2024年03月24日 08:00

野球

【内田雅也の追球】今年も阪神の命運握る岡田采配 作戦でリズムやつながり生む手腕
<神・オ>初回1死一塁、生還した中野(左)を笑顔で出迎える岡田監督(撮影・北條 貴史) Photo By スポニチ
 【オープン戦   阪神4-2オリックス ( 2024年3月23日    京セラD )】 8回表を迎える頃、記者席やプレスルームに大入り袋が配られた。京セラドームのスタンドは満員で観衆発表3万5244人。昨年の日本シリーズ第1、2、6、7戦はいずれも3万3000人台で、この日の満員ぶりがわかるだろう。
 公式戦本番を思わせる熱気のなか、阪神も本番並みの姿勢で臨んだ。

 今春初めて指名打者(DH)制を放棄し、投手を9番に入れた。監督・岡田彰布はDH制否定論者である。セ・リーグ監督会議で議題に上っても「監督が楽になるだけや」と断固反対した。

 パ・リーグがDH制を採用した1975年、セ・リーグは不採用の見解を9項目示した。「野球の伝統をあまりにも根本的にくつがえしすぎる」「投手に代打を出す時期と人選は野球戦術の中心であり、その面白みをなくしてしまう」などだ。岡田もほぼ同意見だ。

 きめ細かな采配が岡田の持ち味なのだ。この日は作戦で選手を動かした。たとえば――

 ▽1回裏無死一塁、打者・島田海吏でヒットエンドラン=ファウル

 ▽1回裏1死一塁、打者・前川右京でヒットエンドラン2度=ファウル、左中間二塁打で一塁走者・中野拓夢生還

 ▽5回裏無死一塁、木浪聖也に送りバント=空振り、ファウル

 ズバリ的中したのは1回裏のヒットエンドラン(盗塁かもしれない)で中野が一塁から長駆生還したぐらいだ。表だっての的中はなくとも効果はあった。選手を動かすことでリズムが生まれ、打線はつながった。相手を下回るわずか5安打で4得点の効率の良さは優勝した昨季を見るようだ。

 「ピッチャーを(オーダーに)入れた方がええんよ」と岡田は得意の「9人野球」に手応えを得ていた。「久々にサイン出したしな」と言うのは作戦でリズムやつながりを生む采配への自信を示しているのだろう。

 この日は体調が万全ではない大山悠輔、森下翔太に近本光司も休養措置を取った。オープン戦最終盤でもベスト布陣を組めない現状がある。開幕当初は手探りとやりくりでしのぐことになろう。

 監督復帰1年目の昨季開幕時は「先が見えなかった」と羅針盤なく船出して波に乗った。選手たちが「未来から来ているのか」「起用や作戦が不思議とあたる」と驚く用兵の妙があった。今年もまた岡田采配が命運を握っている。 =敬称略= (編集委員)

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