×

金足農、勇気の継投王手 2年生エース吉田大輝温存 先発・近藤、6月急死の父にささぐ5回零封

2024年07月20日 05:00

野球

金足農、勇気の継投王手 2年生エース吉田大輝温存 先発・近藤、6月急死の父にささぐ5回零封
<金足農・秋田工>コールドで試合を制した金足農ナイン(撮影・大城 有生希) Photo By スポニチ
 【第106回全国高校野球選手権秋田大会準決勝   金足農8ー0秋田工 ( 2024年7月19日    さきがけ八橋 )】 第106回全国高校野球選手権(8月7日開幕、甲子園)の出場校を決める地方大会は19日、18大会で62試合(継続試合を含む)が行われ、秋田では金足農が8―0で秋田工に快勝し、6年ぶりの甲子園に王手をかけた。公式戦初登板だった先発の近藤暖都(はると)外野手(3年)が5回無失点の好投。初戦から3試合連続完投中だったエース・吉田大輝投手(2年)の温存に成功し、21日に秋田商との決勝に臨む。
 何度も何度も、ズボンの右ポケットにそっと手を入れた。それだけで大好きな父がそばにいると思えたからだ。金足農の近藤が先発の大役を果たし、決勝進出。万感の思いで校歌を歌い終えると、52歳で亡くなった父・章さんが天国から笑ったように、曇り空に一筋の光が差し込んだ。

 「きっと父も見てくれていると思ったので、やるしかないと思って投げました」

 別れは突然だった。組み合わせ抽選翌日の6月25日。授業中だった近藤は家族からの電話に耳を疑った。くも膜下出血のため父が亡くなったと聞かされ、「状況がよく分かりませんでした」。最後の夏の初戦は、2週間後の今月8日。「父を必ず甲子園へ連れて行く」と誓って涙は拭い、自らを奮い立たせた。

 本来は外野手だが、準決勝の先発を知らされたのは試合前日。「予想外です」と笑ったが、最高の結果で応えた。自宅を出る前には「必ず勝ってくるから」と仏壇に手を合わせた。初回から2死三塁のピンチを招いても、ポケットに父の遺骨ケースを忍ばせ、父から力をもらい無失点。その後もスライダーやチェンジアップなど変化球中心で5回3安打無失点に封じ、遺影を持って声援を送った母・幸恵さん(53)にも勇気を届けた。

 2番打者としても1安打1打点。なかなか褒めてくれない厳しい父だったが、「今日ぐらいは褒めてくれますよね」と、少しだけ視線を上に向けながら胸を張った。

 チームはオリックス・吉田輝星の弟で3試合連続完投していたエース大輝の温存に成功。中泉一豊監督は「吉田はどこかで休ませたかったので、近藤を含めて3年生がよく投げた。決勝は吉田中心に全員で守り勝ちたい」と大一番を見据えた。

 準優勝した18年以来、6年ぶりの甲子園まであと1勝。特別な夏を駆けている近藤は「最後まで笑顔で戦いたいです」と迷いはない。次に涙を流すのは、父と男の約束を果たした時と決めている。(村井 樹)

 ◇近藤 暖都(こんどう・はると)2007年(平19)3月17日生まれ、秋田県出身の17歳。天王小3年から野球を始める。天王中から金足農へ進み、1年夏からベンチ入り。目標の選手は智弁和歌山、国学院大で活躍した根来塁。50メートル走6秒2、遠投96メートル。1メートル80、70キロ。左投げ左打ち。

 ≪2番手・花田も存在感≫昨秋以来の公式戦登板となった右腕・花田晴空(はるあ)は2番手として6回から登板し、1回1/3を無安打に封じ3年生4人による完封リレーに貢献した。

 試合中は準備していたブルペンに何度も吉田が現れたが、「“今日は俺たちに任せて、お前はベンチでじっとしていろ”と、追い返しました」と笑顔。決勝では2年生エースの先発が濃厚だが、「自分もいつでもいける準備はしています」と力を込めた。

おすすめテーマ

2024年07月20日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム