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阪神・高橋遥人 手術直前に見た“最後のキャッチボール”「投げられるんですけどね…」

2024年08月12日 05:15

野球

阪神・高橋遥人 手術直前に見た“最後のキャッチボール”「投げられるんですけどね…」
昨年、手首にメスを入れてリハビリする阪神・高橋遥人(本人提供) Photo By 提供写真
 【セ・リーグ   阪神4―0広島 ( 2024年8月11日    京セラD )】 【記者フリートーク】昨年6月のある日、鳴尾浜球場で2軍の公式戦が行われる中、私は隣接する臨海公園野球場に向かった。目の前には背番号29。高橋は、右足を踏み込む度に豪快に砂ぼこりを上げながら球団スタッフを相手にビュンビュンと腕を振ってキャッチボールを行っていた。
 「投げられるんですよ。投げられるんですけどね…」

 その後の言葉は続かなかった。手首の靱帯(じんたい)損傷で満足に手に力が入らない状態での全力投球。もどかしい思いを抱えての“悪あがき”だったことは1週間後、左肩と左手首の手術の知らせを聞いた時に初めて分かった。

 メスを入れる前日も本人と会った。「遠藤さん、また行ってきます」。プロ入り後、実に4度目の手術となる相手に気の利いた言葉は一つも返せなかった。ただ、あの“最後のキャッチボール”を見た者として痛みも、不快な脱力感もなく腕を振る高橋遥人が戻ってくることを願った。

 「うれしかった」と聞いたのは手術から1年がたった今年6月。「みんなとキャッチボールができることがうれしかった。今まではその間、走っていたので」

 「楽しかった」とこぼしたのは実戦復帰後、最長の3イニングを投げた地元・静岡でのマウンドだった。「変化球もいろいろ投げて投球を組み立てられた。地元でずっと応援してくれてる人の前で投げられたんで」

 「変わった」と照れ笑いを浮かべたのは、つい最近だ。「1軍で投げてた時は悪いところばかり見つけてとにかく上を目指すって感じで。今は自分を褒めて伸ばす感じ(笑い)。直球がダメでも変化球で立て直したり。逃げですけどね。悪いとこばっかりなんで良いところを見つけて」

 そして、変わったことはもう一つある。一家の大黒柱となったことだ。22年に結婚した妻には昨年まで投げる姿を一度も見せられていなかった。893日ぶりの実戦復帰となった4月17日のウエスタン・リーグ、オリックス戦を客席で見守った妻は、「生(なま)だ」と実感のこもった言葉をこぼしたそうだ。

 「このまま終わったらダサい。支えてくれる人も報われない」。この1年で何度も聞いた言葉だ。投げる喜びや楽しみを感じ、欠点も許せるようになった。高橋遥人が、勝負の世界に帰ってきたことがただただうれしい。 (阪神担当・遠藤礼)

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