「虎に翼」田中真弓　「沙莉ちゃんは凄い」

2024年07月26日 12:00

芸能

「虎に翼」田中真弓　「沙莉ちゃんは凄い」 — 連続テレビ小説「虎に翼」の寅子（伊藤沙莉）、稲（田中真弓）ら（C）NHK Photo By 提供写真

　【牧　元一の孤人焦点】NHK連続テレビ小説「寅に翼」で主人公・寅子（伊藤沙莉）を支援する女性・稲を演じる俳優の田中真弓（69）が各メディアの取材の応じた。田中は主に舞台で活躍し、声優として人気アニメ「ONE　PIECE」のルフィの声などで知られるが、ドラマなど映像での演技については自ら「新人」と強調。その胸の内は…。

　──2019年の連続テレビ小説「なつぞら」で福祉事務所職員を演じて以来の朝ドラ出演が決まった時の心境は？
　「とにかくうれしかったです。『なつぞら』は登場が1回だけだったので、回を重ねる作品に出てみたいと思っていました。だから決まった時、だるまに目を入れたくらいです（笑）」

　──過去の朝ドラの思い出は？
　「小学生の時、学校に行く前に『おはなはん』（1966年）を見ていました。樫山文枝さんが大好きでした。その後も、日色ともゑさんが出演されていた『旅路』（67年）とか…。小学生の頃は役者になりたいと思えばなれると思っていたし、大きな劇団に入れば18歳で連続テレビ小説の主役に抜てきされるものだと思っていたんです（笑）。なかなか抜てきされないな…と思っているうちに70歳（数え年）になりました」

　──主演の伊藤沙莉さんとは初共演ですが、どんな印象を抱きましたか？
　「人気がある人、ちゃんと仕事ができている人は凄いと思いました。私はずっと舞台をやっていて、同じシーンを何回も撮る映像の演技に慣れていないので、現場で『次はどうすればいいの？』と戸惑ってしまうことがあるんです。そんな時、沙莉ちゃんは『自分もよく分からないけれど、こちらからカメラが狙うんだと思いますよ』という感じで私の負担にならないような教え方をしてくれます。共演者への気の使い方が素晴らしいと思いました。そして、とにかく明るい。沙莉ちゃん自身がいちばん疲れているだろうに、彼女の笑い声で私が救われる部分がありました。普段の明るさがあるからこそ、例えば寅子の夫の優三さん（仲野太賀）が亡くなった時のように、余計に悲しみを表現できるのだと思います」

　──沙莉さんとの芝居でどんなことを感じましたか？
　「『間（ま）』が素晴らしかったです。私はアニメや洋画で『自分ではない人物』が話している映像にセリフを入れていく仕事をしているので、自分で間を作ることに慣れていないんです。今回、沙莉ちゃんとセリフのやりとりをしていて、失敗したと思ったことが何度かありました。私は次のセリフがあると、そのセリフを早く言ってしまおうとするんです。そのことに自分では気づかなくて、演出の方から『稲さん、寅ちゃんのセリフを食ってしまっているので…』と注意されたことがありました。沙莉ちゃんに『すみません』と謝ったら、沙莉ちゃんは『いえいえ。私が遅かったんです』と言ってましたが、沙莉ちゃんの間が正しいんです」

　──2人の芝居で最も印象に残っているシーンは？
　「稲が寅ちゃんに『私がここに来るのは迷惑でしたか？』と尋ねるシーンがあります。そのシーンで、寅ちゃんが『ライトハウスを手伝ってくれませんか？』と言った時のお互いの表情はうまくいった気がします。ちゃんと受け取れたし、ちゃんと受け取ってもらえました。2人の関係性がよく表れたシーンになっていると思います」

　──5月15日放送の第33回で稲が弁護士になったばかりの寅子に言ったセリフ「全ては手に入らないものですよ」はSNSで「ルフィが言うのね…笑」などと話題になりました。
　「ルフィはほしいと思ったものは全て手に入れるタイプですからね（笑）。反響があるのはうれしいです。岡田将生くん（裁判官・星航一役）と初めて一緒に撮影して後日、メークルームでお会いした時、岡田くんがルフィが好きなことが分かって、私がルフィのセリフ『おまえはオレの仲間だ』を言ったらとても喜んでくれました。ルフィをやっていて良かったと思います」

　──慣れない映像の仕事を続けていくことは？
　「『70歳、新人です』という感じで、うれしくて仕方がないです（笑）。この年齢になって新しいことができるのはとてもうれしい。今のところまだ慣れていませんが、慣れれば私だって！という思いがあります。70歳ですが、私はまだまだ伸びしろだらけなんですよ。だから、続けてやらせて頂きたいと思っています」

　◆牧　元一（まき・もとかず）　スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部専門委員。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。