福田沙紀 オスカー退所からフリー、そして監督挑戦の理由を語る「失敗するかもしれない道こそ…」
2024年10月23日 07:00
芸能
「女優デビューしてからさまざまな作品、素晴らしいスタッフ、役者の先輩の皆さんの姿を見てきて、作品作りをする現場がシンプルに大好きで、振り返ると、私は20歳のころのインタビューで“いつか監督をやりたいです”って言っていました。その後もいつかそういう機会があればという気持ちはあったのですが、夢のまた夢と思っていたので、今回こういう機会をいただけて感謝しています」
13歳だった2004年の第10回全日本国民的美少女コンテストで演技部門賞を受賞し、芸能事務所「オスカープロモーション」入り。同年にTBS「3年B組金八先生」で女優デビュー。07年に放送した「ライフ」で見せた、いじめの主犯格役が今でも語り草になるほどの強烈な印象を残したほか、さまざまな作品で主役、ヒロインを演じた。そんな福田がなぜメガホンをとったのか。
「映画『シキ』(23年公開)に出演した時、(同作の)山口龍大朗監督と同じ熊本出身だったこともあってさまざまな話をした中で、私が役者ではなく裏方として作品作りに関わっていきたいと伝えたら“福田さんは監督ができるんじゃないかな?”と言っていただきました」
山口監督は、福田に適性を感じていたようで、BUMP側に話を伝えた。そしてBUMPが福田へ連絡。「BUMPさんから“ぜひ撮ってみませんか?”と声を掛けていただきました。ショートドラマということで、自分が役者としても参加したことのないジャンル。ショートドラマの市場が成長している中でそういったプラットフォームに挑むことができるなんてワクワクすると思いました」
2020年8月末に「オスカープロモーション」を退所し、フリーへ。その後、経験したことが新境地への後押しをした。「事務所に所属していた時には、案件が私のもとへ来る前に事務所が決断してくれていたことが多くあったけれど、独立後には自分で一つ一つ決めて選択しないといけない場面が想像以上にありました。ワクワクする半面、ちょっとおじけづいた自分もいて、どれが正解なんだろう、失敗しちゃいけないって考えてしまって、そうこうしているうちに苦しくなっちゃったんです。そして、ふと考えた時、失敗してもいいんじゃないかって思えるようになって。正解の道って想像の範囲内の結果しか出ないけれど、失敗するかもしれない道を選んだら自分の想像を超えた経験ができるんじゃないかって思うようになりました」
それでも数々の人気作で主演を務めてきただけに、監督の責任の大きさも知っていた。悩んだこともあった。「BUMPさんが作品を撮りましょうと言ってくれたとはいえ、果たして私は監督に向いているのか、いないのか。いろいろな方々が仕事をして、予算、お金が動く中で果たして務まるのか。できなかったらどうしよう。そう考えた時に震える自分もいました。でも、この未経験の私に“やりましょう”と手を差し伸べてくださったんだったら、私はその手を握り返してもいいんじゃないかと思いました」
監督デビュー作となった「大人に恋はムズカシイ」で撮ったのは、1話1分前後の全29話。「いろいろな人の気持ちや力が集まって一つの作品ができあがるということが、監督という立ち位置に立たせていただいたことでよりはっきりと見えてきました。大変というよりは、準備期間から編集までとにかく楽しくて仕方なかったですね。監督として限られた予算の中で、できるだけスタッフに負担がかからないようにして、作品のクオリティーを担保して最善を尽くしていくという作業でしたが、それが結構性格に合っていたみたいです」
物語は、アラサー会社員の美冬(下京慶子)が結婚を考えていた彼氏に振られ、店で1人ヤケ酒をした翌朝、目覚めると、ベットの自分の隣には“仔犬顔”の年下男子・隼人(平井亜門)がいたことから始まる。その後、隼人に「本当に1人で生きていきたいの?」とたずねられ、美冬は自分自身の気持ちに素直になることを学んでいく。理性では交わらない方がいいと分かっていながら、美冬は年齢も立場も全く違う隼人に惹かれていくが…というドキドキの展開が描かれる。
結果、生まれた作品は、出演者のナチュラルな演技と生き生きとした表情、飽きさせない画角、台詞のテンポ感が良くて楽しく見られるとして評判だ。
「楽しんで見ていただけていると聞いて勇気を出してチャレンジしてよかったとすごく思いますし、もっといろいろな作品を撮っていきたいという気持ちでいます」
1話1分ドラマという新たなジャンルでデビューした福田監督。晴れやかな表情からうかがえるのは充実した仕事ぶり。女優としてもちろん活動は続ける上で、今後、どんな作品を生み出していくのか期待は高まるばかりだ。