中尾ミエ ミエてきた“志半ば”こそ人生の至福 習い事も友人関係も“広く浅く” 究極の人生の閉じ方へ
2024年11月03日 05:00
芸能
まずは40代の頃クラシックバレエを始め、水泳など体を動かす習い事に取り組んできた。俳句を始めたのは10年前。「体が動かなくなった時、何か趣味があった方がいい」くらいの軽い気持ちだった。「今まで使ってなかった細胞が動き出した感じがして、これは続けた方がいいと思った。いかに自分が何も注意して生活していないかが分かる」と、効果を強調。短い言葉に感情と情報を詰め込む面白さを知った。今も月に1回ほど集まって俳句を詠み、脳に刺激を与えている。
昨年から始めたのは日曜大工。これまでにテーブルやベンチを作った。そこには「いかにお金をかけず楽しむかということに人生をシフトした」と心境の変化があった。「DIYがもう少し進歩したら、今度は空き家をリフォームしたい」と“野望”も抱く。どの習い事も続けるからにはしっかりと目標を立てる。「無理やり目標をつくる。そうするとやらざるを得なくなる」。だが、目標の達成にこだわり過ぎないのが長続きのコツだという。
「知らないことは経験してみたい」。あふれるバイタリティーと好奇心は表裏一体。「知りたい」と「やりたい」が直結しているのが、若さの秘訣(ひけつ)だ。今も「知りたい」「やりたい」と思えるのは、若くしてブレークしたため学校で勉強できず、自ら学ぶ姿勢を育んできたからだ。
「世の中は知らないことばかり。学校にほとんど行けなかった。だったら学問以外で自分の人生に役に立つようなことが少しでも多く経験できた方がいいじゃない。そうじゃないと自分に自信が持てなくなってしまう」
デビュー曲「可愛いベイビー」からちょうど60年の2022年に出演したミュージカル「ピピン」では空中ブランコに挑戦。70歳を過ぎても「知りたい」「やりたい」は抑えられない。
多くの習い事に手を出す一方で、意外にも“極める”ことに興味は薄い。「人間、一人一つ才能があればいい。それでみんなの才能を少しずつ借りながらやっていく。トップになりたいわけじゃないけど2番手くらいで偉そうなことを言っていたい」。仲間との関わりの中で“頼り頼られる”関係が心地よい。そのためには何もかも極める必要はないのかもしれない。
時にはサボりたくなる自分を引き戻してくれるのも仲間たち。「一人だと長続きしなくて、今日はちょっといいか、みたいに思っちゃうけどね」。若い頃は仕事に没頭し、友人と呼べる人間はいなかったという。だが年を重ねた今「広く浅い」友人関係を築くようになった。日課とする毎朝の散歩では、公園で近所の高齢者と交流。トレーニングを指導し、今では「ミエ道場」と呼ばれている。
走り続けた人生に悔いは一切ないという。そんな中尾がたどり着いた思いが「人生 志半ばで終わりたい」。究極の人生の閉じ方は、極めないことにあり。
◇中尾 ミエ(なかお・みえ)1946年(昭21)6月6日生まれ、福岡県出身の78歳。62年のデビュー曲「可愛いベイビー」は100万枚を売り上げる大ヒット。同年に園まりさん、伊東ゆかりと「スパーク3人娘」を結成。日本テレビの音楽バラエティー番組「シャボン玉ホリデー」などに出演し人気を不動に。現在はTOKYO MX「5時に夢中!」で金曜コメンテーターを務める。