“モンゴルの怪物”逸ノ城が初優勝 旋風起こした新入幕から8年 苦難乗り越え「とてもうれしい」
2022年07月25日 05:10
相撲
取組では業師の宇良を一方的に退けた。立ち合いは完敗した14日目の明生戦と同じく左で張り、すぐに左上手をつかんだ。右をねじ込んで万全の寄り。「昨日(14日目)は受けてしまった。自分から前に出ればいい」と快進撃につながった取り口を千秋楽も貫いた。
新入幕の14年秋場所で旋風を起こした。1メートル92、200キロに迫る巨漢。大関、横綱初挑戦で平然と立ち合い変化する度胸があり、まさに“大物”だった。
しかし恵まれた体格が逆に出世をはばむ。16年夏巡業で腰に激痛が走り、左半身がしびれた。腰椎椎間板ヘルニアで約1カ月入院して同年秋場所を全休し、19年九州場所を再びヘルニアで全休するなど慢性化。「もしかしたら相撲が取れなくなるかも、土俵に上がれないかも」と不安に駆られた。
その一方で「いつかは優勝したい。やればできる」と自分を信じ続けた。19年春場所は西前頭4枚目で14勝1敗の好成績も、対戦すら組まれなかった横綱・白鵬が全勝優勝。不運にも、めげなかった。
師匠の湊親方(元幕内・湊富士)は「(新入幕当時は)勝負の神様が“まだダメだぞ”と許さなかった。(一時は序二段まで転落した)照ノ富士ほどじゃないけど、逸ノ城も相当どん底を見ています。いろんな人に支えてもらい、強くなれた」と話し、曲折を経ての成長が初優勝につながったと見立てる。
米ハワイ生まれ、外国出身のパイオニア・高見山の初優勝は72年名古屋場所。ちょうど半世紀の節目で、首都ウランバートルから約400キロ離れたアルハンガイ県出身で、遊牧民の家庭に育った“モンゴルの怪物”がついに目覚めた。「今回をきっかけに気持ち良く戦っていきたい」。力強く進撃開始を予告した。
【逸ノ城 駿(いちのじょう・たかし)】☆名前 本名は三浦駿(みうら・たかし)。21年9月に日本国籍を取得。師匠の湊親方(元幕内・湊富士)から三浦姓をもらい、駿はしこ名の下の名前。モンゴル出身で旧名はアルタンホヤグ・イチンノロブ。しこ名の「逸」は本名と逸材の意味を絡め、出身の鳥取城北高から「城」の字をつけた。
☆生まれ、サイズ 1993年(平5)4月7日生まれ、モンゴル・アルハンガイ出身の29歳。1メートル92、211キロ。
☆競技歴 モンゴル相撲と柔道の経験があり、10年に鳥取城北高へ相撲留学。卒業後、同高コーチを務めながら13年に全日本実業団選手権の個人で優勝。
☆スピード出世 14年初場所、外国出身初の幕下15枚目格付け出しで初土俵。新十両の同年夏場所優勝。同年秋場所で新入幕。横綱の鶴竜から金星を獲得するなど13勝2敗で殊勲賞と敢闘賞受賞。“モンゴルの怪物”と呼ばれる。
☆上位キラー 今場所5日目に照ノ富士を破り、金星9個とした。現役最多で歴代10位。
☆趣味 音楽鑑賞。吉幾三ら演歌を好む。
【逸ノ城の優勝アラカルト】☆平幕優勝 21年初場所の大栄翔以来34人目。名古屋場所は6人目で初場所の5人を抜いて最多。
☆モンゴル出身 朝青龍、白鵬、日馬富士、旭天鵬、鶴竜、照ノ富士、玉鷲に次いで8人目。
☆外国出身 72年名古屋場所の高見山(米国)から15人目。モンゴル出身8人のほかに小錦、曙、武蔵丸、琴欧洲、把瑠都、栃ノ心。
☆新入幕からの所要場所 14年秋場所から47場所。歴代9番目のスロー記録。
☆湊部屋 82年12月に先代師匠(元小結・豊山)が時津風部屋から独立。現師匠(元幕内・湊富士)が10年名古屋場所後に継承し初の優勝。
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