「一生成長できる」42歳のサーファー大野修聖がパリ五輪を目指す理由

2023年04月30日 12:30

サーフィン

「一生成長できる」42歳のサーファー大野修聖がパリ五輪を目指す理由
パリ五輪を目指してジャパンオープンに出場した42歳の大野修聖 Photo By スポニチ
 「行くところまで、行くと思います」
 波のコンディションを鑑み、当初の予定から4日順延して4月27日に開催されたサーフィン日本一を決めるジャパンオープン。今年は来年のパリ五輪の会場となるフランス領ポリネシアのタヒチ島チョープーの波が特殊であることから、特定強化指定を受けた男子12人、女子8人と少数精鋭の出場によるハイレベルな大会となった。その男子12人のうちの1人が、冒頭の言葉を残した大野修聖、42歳だ。

 3人で争われた1回戦は、残り45秒で乗った最後のライディング2位に浮上し、0・10点差で辛くもラウンドアップ。続く1対1の対戦方式となった準々決勝は、東京五輪5位の大原洋人と対戦。大野も7・33点と1本はハイスコアをマークしたものの、セカンドベストが2・17点にとどまり、合計14・33点の大原に敗戦。「選手として、磨きが掛かっている選手とできた。細かいヒートの組み立てとか、まざまざと感じられた。そうだよな、と思い出させられた」。少しさび付いていた、あるいはほこりを被っていたコンペティターとしての本能を呼び覚まされたかのような、味わい深いコメントを残した。

 15歳でプロ転向し、3度の国内チャンピオンに輝いた。2000年代後半からはプロ最高峰のチャンピオンシップツアー入りを追い求め、世界の海で闘ってきた。16年8月、東京五輪の追加競技にサーフィンが正式決定した際には、千葉市内で行われた連盟の会見にも出席する象徴的な存在だったが、あれから7年経過した今では、素直に「あまり(出たい気持ちは)なかった」と語る。

 一時は競技会から遠ざかり、東京五輪では「キャプテン」として、首脳陣と選手の間の潤滑油役を務めた。そんな大野が再びサーファーからコンペティターに戻り、パリ五輪を目指す理由は、「チョポ(チョープー)だから」と言い切る。厚みがある筒状の波(チューブ)は、世界で最も危険なサーフポイントとも言われ、今大会に出場したほとんどの体験者が「怖い」と口にするほど。だからこそ、乗りこなしたい。そこで開かれる五輪に出たい。それがサーファーとしての本能なのだろう。「次(28年ロサンゼルス大会)を目指そうとも思わない」と24年だけに絞り、しばらく休んでいた競技者としてのトレーニングも再開して久しいという。

 大会後にはパリ五輪の予選会でもある5月30日開幕のワールドゲームズ(WG=世界選手権に相当、エルサルバドル)の代表選手男女各3人が決まった。代表入りを逃した大野にとって、チョープーへの道が険しくなったことは間違いない。だが、「サーフィン人生を懸けて乗っているし、乗りたい場所」との思いがあるからこそ、冒頭の言葉を発した。0%になるまで、可能性を追い求める。その意思表示だ。

 「コンペティターとしてはともかく、サーファーとしては一生成長できると思う。ラインがシンプルになったり、もっと研ぎ澄ませていけると感じている」

 目尻のシワに味を感じさせる42歳の挑戦を、まだまだ見続けていきたい。(記者コラム・阿部 令)

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