阪神・湯浅がこだわり抜いた直球勝負 「一番悔しかった」被弾を糧に

2022年07月12日 11:49

野球

阪神・湯浅がこだわり抜いた直球勝負 「一番悔しかった」被弾を糧に
2日の中日戦の8回無死、A.マルティネスから三振を奪い雄たけびをあげる湯浅(撮影・大森 寛明) Photo By スポニチ
 味わった屈辱を晴らす阪神・湯浅の投球に、心を動かされた。7月2日の中日戦、3点優勢の8回。前日にプロ34試合目で初被弾となる決勝2ランを食らった先頭のA・マルティネスに対し、フルカウントから6球目、選んだのは前日仕留められたストレートだった。外角やや低めの152キロに助っ人砲のバットは空を切り、右腕はマウンド上で「シャッ!」と吼えた。
 試合後代表取材には当たらなかったが、どうしても本人に聞いておきたかった。投じた6球中、初球のフォーク以外は全て直球。やはり同じ球種でやり返したかったのか――。後日甲子園での試合前練習後に取材すると、湯浅は力強く首を縦に振った。「一番悔しかったんで」。被弾直後は思わずマウンドでしゃがみ込み、試合後もタオルで顔を覆う姿を記者は他選手の取材前に目にしていた。それでも、打たれた直後やチーム宿舎、そして翌日の試合前練習でともに戦う投手陣からの励ましの声が、落ち込む右腕の支えになった。

 「“切り替えろ”とか、色々声かけてくださって。誰がというより、もう全員から」

 福原投手コーチからは現役時代の経験を基に助言をもらい、金村投手コーチからは「やられたら、同じボールでやり返せ」と背中を押された。自らの思いとも一致していた。「ブルペンのときからマルティネスがくるのは分かっていたので。マウンド行く前から(捕手の)梅野さんにも(直球で勝負したいと)伝えてあった」。立ち向かう勇気を全面に押し出し、1日にして雪辱を果たした。

 「次の日に投げられるチャンスをもらえたのはありがたい。しっかり監督の思いに応えるようなピッチングをしたいと思っていたので、0で抑えられてよかった」

 12日時点で33試合に登板して1勝3敗、防御率2・03を誇り、23ホールドは2位の今村(巨人)に3差を付けてリーグトップ。聖光学院時代の成長痛による腰痛、そしてプロ入り後3度の腰椎分離症を乗り越え、とうとう侍ジャパンの栗山監督に注目選手として挙げられるまでに飛躍を遂げた。「今、野球できていることが本当に幸せ」。幾多の困難を乗り越えてきた22歳のシンデレラ・ストーリーは、まだ始まったばかりだ。(記者コラム・阪井 日向)

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