北の大地から日本一を目指して 「侍」監督も絶賛する慶大・藤井快主務

2023年11月20日 00:05

野球

北の大地から日本一を目指して 「侍」監督も絶賛する慶大・藤井快主務
慶大・藤井快主務(撮影・大城 有生希) Photo By スポニチ
 【明治神宮大会・大学の部準決勝   慶大5―1日体大 ( 2023年11月19日    神宮 )】 明治神宮大会・大学の部は準決勝2試合が行われ、慶大は日体大に5―1で逆転勝ちし、19年以来4年ぶり5度目の優勝に王手。20日の決勝は広島1位の常広羽也斗投手(4年)と阪神1位の下村海翔投手(4年)の両エースを擁して初優勝を狙う青学大と戦う。
【影からチームを支える主務という存在】
 選手たちをまとめ上げるリーダーが「主将」であり、野球部の運営を担い、部外との窓口も担当するマネジャーたちのトップを「主務」という。高校より「自主性」を求められる大学野球部では重要度の高い存在である。

 今秋ドラフトでソフトバンクから3位指名を受けた二塁手・広瀬隆太主将(4年)はこの日、日体大戦で2打席連続本塁打をマーク。ド派手な活躍でチームを決勝進出に導いた。一方、記録員としてベンチ入りした藤井快主務(4年・札幌旭丘)は影からチームを支えてきた。


【大学侍ジャパンの名将も認める貢献度】
 指導者、選手と協議を重ね、チームの日程や練習試合の対戦相手を決定し、試合では記録員としてベンチ入りする藤井主務。チームの羅針盤ともいえる存在だ。侍ジャパン大学日本代表の監督を兼任する慶大・堀井哲也監督は「彼は考える能力、先回りする能力が高い優秀なマネジャー。視野が広く、プレーのこと、選手のこと、藤井はうまく情報をくれるんです」と働きぶりを評価する。

 「先回り」。その言葉を象徴する場面が18日の環太平洋大戦であった。試合前のシートノックで本間颯太朗内野手(3年)のグラブのひもが切れるアクシデントが発生。試合開始時間は迫っていたが、何色ものグラブのひも、整備道具を携帯する藤井主務が応急処置。本間は無事に三塁手としてスタメンで出場。まさに誰も知らない「ファインプレー」だった。藤井主務は常に「選手がノーストレスでプレーに集中できる環境をつくること」をテーマに仕事に向き合う。広瀬主将は「本当に滞りなく仕事をこなしてくれる。僕たちが知り得ないところでも働いてくれている。感謝しています」と言葉を惜しまない。

【先回りの秘訣】
 すり減った靴底が努力の証。慶大のマネジャーが活動する部屋は練習グラウンドから約200メートル離れた野球部寮にある。会計や取材の調整などマネジャーの作業に専念すると、どうしても選手と顔を合わせる機会は減りがちだ。そこで藤井主務は選手とマネジャーの「ギャップ」を生まないために作業を中断してでも頻繁にグラウンドを訪れる。自分の目で選手を観察することでわずかな変化にも気づき、「先回り」ができる。

【一浪の末に憧れの慶大へ】
 小学校から慶応一筋の広瀬主将とは異なり、藤井主務は北海道の地で慶大に憧れを抱き、一浪の末に進学を果たした。中学時代、自宅の近所に住んでいた年上の知人が「慶大生」となったことがきっかけ。札幌旭丘高校では投手としてプレーし、3年夏は背番号1をつけた。それでも「自分がプレーヤーとして貢献できる要素はなかった」。東京六大学野球の名門で掲げた目標は日本一。マネジャ―の道を極めようと決心した。

 新型コロナウイルスが世界的に猛威をふるっていた20年に慶大入学。最初の春のリーグ戦はわずか5試合制となり、大学での授業すらもままならず「オンライン」の日々が続いた。「声出し応援」など東京六大学野球が本来の姿を取り戻したのは藤井が4年となった今春だった。コミュニケーション能力を評価され、昨秋の新チームから主務に就任。「やり残すことはない」と言い切るほど1日、1日に必死だった。

【集大成の明治神宮大会】
 11月15日に開幕した明治神宮大会。大会終了とともに引退となる集大成だ。日体大に勝利した準決勝後、三塁側ベンチ前で広瀬主将とグータッチし、お互いを称え合った。そこでもポーカーフェイスを貫いていた主将に「感情を表に出さないところがアイツのいいところ」と藤井主務。ナイターの下、対照的な笑顔が輝いていた。

 20日は同じ神宮を本拠地とする東都大学野球連盟の青学大と決勝。「明日は勝つだけです。ずっと決勝に来ようと話してきたので」。「陸の王者」の一員として駆け抜けた4年間。最後のスコアは勝利で刻むと決めている。(柳内 遼平)

 ◇藤井 快(ふじい・かい)2000年(平12)4月30日生まれ、北海道函館市出身の23歳。月寒小5年から月寒アパッチャーズで野球を始める。月寒中では軟式野球部に所属。札幌旭丘では投手としてプレー。1年秋からベンチ入りし、3年夏は背番号1。一浪して慶大に入学。マネジャーとして野球部に入部し、3年11月に主務就任。趣味は写真撮影。卒業後は大手コンサルティングファームに就職予定。

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