「ネット叩き」時代にリプレーなしでジャッジするために…研修で技術向上 小山克仁氏「選手に寄り添う」

2024年02月25日 13:48

野球

「ネット叩き」時代にリプレーなしでジャッジするために…研修で技術向上 小山克仁氏「選手に寄り添う」
平塚球場で2日間の研修を終えた小山氏(撮影・柳内 遼平) Photo By スポニチ
 全日本大学野球連盟は25日、神奈川県平塚市で北海道や沖縄など全国の大学野球リーグに所属する65人の審判員が集結した審判研修会を終えた。
 24日から2日間の日程で「セーフ」や「アウト」など基本動作を繰り返す「ゴー・ストップ・コール」や投球判定などのメニューが行われた。アジア野球連盟の審判長で、アマチュア野球規則委員会の副委員長を務める小山克仁氏(62)は「新しい考えを伝達して、全国に持ち帰っていただくことが目的。原点を振り返ること、基本の大切さを認識することができたと思います。常にスキルを進化させていくことを忘れてはいけない。皆さんもそう感じてくれていると思います」と話した。

 プロ野球12球団の試合の審判員を担当するNPBでは「リクエスト」が導入されており、セーフ、アウトなどに疑義が生じた場合、映像での判定検証を行っている。多くの観客が訪れ、グッズ収入もあり、施設の整った球場で開催されるプロ野球だからこそ、確かな映像検証の設備が整う。だがアマチュア球界は違う。一昔前のNPBのように「リプレー」はなく、審判員が協議した場合などを除き、審判員のジャッジが最終となる。

 大学野球リーグも同様だ。その分、研修会の持つ意味は重要性を増す。小山氏は「選手の技術が上がってきてプレーの形も変わってきている。盗塁の場面でいうと走者が体を回転させてタッグ(タッチ)をかわすような動きも増えてきた。正確にジャッジするためには死角をつくらない動き、位置取りが大切になる。選手のプレーに合わせた進化が審判員にも必要」と語った。実戦練習の中では投球判定やタッチプレーの中で「最適解」を探す研修が行われた。今回の研修で示された新たな知識が全国に共有されることになる。

 「参加している審判員の上達が凄い。各リーグで腕を磨き、技術を高めてきていると感じます。選手の技術も上がってきている中、精度の高い判定をすることで選手の信頼を得ていくことにつながる。審判員も選手もお互いにグッドゲームを目指している。私たちは選手により近づけるような判定をしていきたい」と小山氏。全国の大学野球での球春到来に向け、実りある研修会となった。(元NPB審判員、アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)

<取材後記>
 11年から16年までNPB審判員を務めた記者は「リプレーなしの怖さ」を知っている。記者の現役時代、「リプレー判定」は本塁打に関わる判定に限られていた。2軍戦でも「一球入魂」の精神で担当したが、1軍の試合、しかもNHKで全国放送される試合をジャッジする際には「ミスしたら腹を切ろう」と本気で思うくらいプレッシャーを感じていた。現在、NPBでは「リプレー判定」が導入されている。明らかなミスは訂正され、大々的に叩かれることも少なくなった。だが、NPBほど資金的、設備的に恵まれていないアマチュア野球の審判員は人の力が100%。本業を持つ中、休日に審判員を務めてアマチュア球界に多大な貢献をしている方ばかりだが、時にはネットで判定を叩かれることもある。昨夏の高校野球では「大炎上」もあった。今回、大学野球の審判員の取り組みに触れ、一球に懸ける思いの強さを実感。アマチュア野球の審判員は「リスク」を負った上で、陰から日本の野球界を支えている。

おすすめテーマ

2024年02月25日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム