【内田雅也の追球】阪神・小幡の遊撃手奪回に燃える必死さに見えた「初心」 連覇へ、慢心せず謙虚に

2024年02月25日 08:00

野球

【内田雅也の追球】阪神・小幡の遊撃手奪回に燃える必死さに見えた「初心」 連覇へ、慢心せず謙虚に
<オープン戦 ヤ・神>3回、二盗を決める小幡(撮影・岸 良祐) Photo By スポニチ
 【オープン戦   阪神0-1ヤクルト ( 2024年2月24日    浦添 )】 阪神・小幡竜平の盗塁が目にとまった。ヤクルト戦(浦添)の3回表2死、四球で出ると、続く小野寺暖の初球に走った。投手・木沢尚文はクイックで速球のストライクを投げていたし、捕手・中村悠平の肩も悪くない。それでも余裕でセーフだった。
 その果敢さと勇気、そして何より必死さを思った。直前の2回裏、遊ゴロを後逸していた。何でもないゴロのように見えたが、打球は直前で沈み、中前に抜けていった。跳ねない形の不規則バウンドだったが、後逸は間違いなく失策がついた。

 そんな守備のミスを取り返そうとする気概が見えた。打席ではファウルで粘り、際どい球を見極めて出塁していた。

 キャンプ終盤、総仕上げのオープン戦である。競争は激しさを増す。小幡も必死だった。

 昨年はキャンプ、オープン戦で結果を出し開幕スタメンを勝ち取った。だが先発は開幕6試合目までで、以後は木浪聖也に遊撃手を奪われた。

 今春は遊撃手奪回に燃えているだろうが、優勝に貢献した木浪を抜き返すのは並大抵ではない。前日の巨人戦(那覇)は木浪が長短打を連発するのをベンチで見届け、自身は見逃し三振。期するものがあったろう。

 この日の先発は若手中心だった。レギュラー陣は後半から終盤の途中から出場した。先発フル出場は小幡だけだった。

 「逆にしたんよ」と監督・岡田彰布が意図を語った。主力選手たちに向け「(先発で出る)ありがたみと言うのかな。それを分からせたかった」と話す。「途中から出て1打席で結果を出すのは簡単じゃないということよ」。主力が出た後半も打線は沈黙し、阪神は1安打零敗だった。

 先発起用された若手はもちろん必死である。現在1軍に22人いる野手の絞り込みが本格化する。主力たちに、かつての自分たちの姿勢、つまり必死さを思い起こさせようという用兵だった。

 「初心忘(れ)るべからず」である。もとは世阿弥の言葉で「是非の初心忘るべからず 時々の初心忘るべからず 老後の初心忘るべからず」と『花鏡』にある。未熟だった、その時々で初心を忘れるな、慢心するなという警句である。

 小幡の果敢、必死には初心が見えた。連覇に挑む今季、油断や慢心を戒め、謙虚に前を向く。岡田の用兵に、そんな深謀が見えた。 =敬称略= (編集委員)

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