低反発バットで増加する木製の使用 その前に知りたい「金属導入」に込められた高校野球発展への思い

2024年04月25日 08:00

野球

低反発バットで増加する木製の使用 その前に知りたい「金属導入」に込められた高校野球発展への思い
センバツ<青森山田・京都国際>初回1死二塁、青森山田・対馬は木製バットを手に打席に入る(撮影・後藤 大輝) Photo By スポニチ
 高校野球では公式戦での木製バット使用が増加傾向にある。金属製バットが今年度から低反発の新基準に完全移行されたことが一因だ。今春選抜では青森山田(青森)の中軸選手が木製を持ち、春季大会でも金属の使用を避ける例が見られる。
 高校生自らが考え、自由にバットを選択できる環境が望ましい。その前提に立った上で、バットを選択する上での参考として日本高野連が金属製バットを導入するに至った経緯を今一度紹介したい。

 金属バットは、日本での普及前に米国の高校生や大学生が使用していた。1973年に行われた日本とハワイの高校生が戦う第5回日布親善高校野球で、相手チームからアルミ製金属バットを使用したいとの申し出があった。この一件をきっかけに金属製バット導入の議論が国内で始まった。

 当時の日本では、木製バットの材料不足と需要の増加で木の天然乾燥が間に合わずに人工乾燥させていたため、バットが折れやすかった。ただし、常任理事会や審判規則委員会では金属バット導入に反対意見が多数を占めていた。その状況に日本高野連の佐伯達夫会長が「高校野球では経費がかかりすぎていて将来の発展に問題がある。さらに木製バットは今後も値上がりが予想される」と強調した。同会長は、高校野球発展のために経済負担を抑えないといけないという危機感を抱いていたのだ。そして74年3月の常任理事会で金属バットの導入が承認され、同連盟から加盟校に3600本の金属バットを配布された。

 金属バットの反発性能は、基準を改定しながら抑制されてきた。99年12月の全国理事会では牧野直隆会長が「金属製バットを魔法の杖にしてはいけない」と言及。「金属製バットは木製バットの代用である」と位置づけて安全基準が制定された。2019年にも金属製バットの反発性能をより木製に近づけるべきとの提案があり、今回の新基準バット導入につながった。

 金属バットには、経済負担を抑えることで高校野球をより発展させたいと願った人たちの思いが詰まっている。新基準バットの価格は旧基準より上がったものの、米国の相場と比べれば約3万円安く、国内メーカーの努力によって他国よりも安価な価格帯で販売されている。もちろん木製バットを使用するのも良し。その一方で、費用を抑えられる「飛ばないバット」で打力向上を目指す姿も高校野球発展のために大切にしていきたい。(記者コラム・河合 洋介)

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