【内田雅也の追球】激しい優勝争い「スコアボードを気にするな」 阪神は自分のプレーに集中していた

2024年09月08日 08:00

野球

【内田雅也の追球】激しい優勝争い「スコアボードを気にするな」 阪神は自分のプレーに集中していた
<ヤ・神> 2回2死満塁、高橋にファウルで粘られる才木(撮影・大森 寛明) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神6-0ヤクルト ( 2024年9月7日    神宮 )】 9月のセ・リーグは優勝争いが激しくなる、まさに「セプテンバー・ヒート」にある。上位4チームで争い、他球場の戦いも気になる。デーゲームで広島が勝ち、巨人は接戦終盤というなか、ナイターの神宮はプレーボールとなった。
 こんな時、大リーグには「スコアボードを見るな」という警句がある。スコアボードに掲示される他球場の結果、途中経過のことだ。

 1949年、ヤンキースとレッドソックスの優勝争いを描いたデービッド・ハルバースタムの『男たちの大リーグ』(宝島社)にヤンキース監督、ケーシー・ステンゲルの言葉がある。「スコアボードを気にするな。自分のプレーに集中しろ。自分の野球をやるんだ」

 名将はこの注意をジョー・ディマジオ、ヨギ・ベラ、エド・ロパットら選手たちに与えた。

 神宮のスコアボードに他球場の速報スペースはない。それでも選手たちはベンチ裏で広島や巨人の状況を把握していただろう。それでも目の前に集中し、1回表、4点を先取したのである。

 もちろん見事な速攻だったが、勝利へのポイントは2回裏の守り、先発・才木浩人の踏ん張りだったとみている。

 3安打を浴び、1死満塁。しかも打者・中村悠平に3ボール―0ストライク。この「ノースリー」から速球3連投で二飛に切った。投手・高橋奎二にもファウル6本、計11球も粘られ、フルカウントからフォークでようやく三ゴロに切った。

 さすがの踏ん張りである。才木は今季これまで満塁で12打数1安打、被打率・083だった。高橋宏(中日)・182、大瀬良(広島)・250、菅野(巨人)・200らをしのぎ、小笠原(中日)の・000(2打数無安打)を除き、リーグ最高の成績だった=記録は6日現在=。

 才木は4、5、6回にもピンチを背負ったが、得点圏で11打数1安打と決定打を許さなかった。サンタナに3安打されたが、すべて回の先頭。サンタナの前で切っていたのも大きかった。

 何度か書いたが、監督・岡田彰布が唱える「4―0の法則」がある。「序盤に4点取ると油断が生まれる。追加点を取れないと逆転を許してしまう」という経験則だ。

 阪神は9回表まで追加点は奪えなかったが、油断はなかった。広島、巨人の勝利を承知の上、「自分のプレー」に集中していた。 =敬称略= (編集委員)

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