若菜嘉晴氏 ソフトバンク・スチュワートの球威と荒れ球に苦しんでいたDeNA打線助けた短期決戦采配

2024年10月30日 05:30

野球

若菜嘉晴氏 ソフトバンク・スチュワートの球威と荒れ球に苦しんでいたDeNA打線助けた短期決戦采配
<ソ・D>5回、桑原(奥)に勝ち越しのソロ本塁打を浴びた大津(撮影・北條 貴史) Photo By スポニチ
 【SMBC日本シリーズ2024第3戦   DeNA4―1ソフトバンク ( 2024年10月29日    みずほペイペイD )】 【若菜嘉晴 日本シリーズ大分析】ソフトバンクの2勝0敗で迎えた第3戦はDeNAが雪辱した。本紙評論家の若菜嘉晴氏(70)は、ソフトバンクの敗因に1―1の5回に先発のスチュワートから大津に代えたことを挙げた。短期決戦ならではの早めの継投策が裏目に出た一方で、DeNAには吉と出た勝敗の分かれ目。シリーズの流れが変わる一戦となった。(構成・鈴木 勝巳)
 ≪ソフトバンク“くみしやすし”大津の投入が裏目≫短期決戦は投手の代え時が大きなポイントだ。第3戦はソフトバンクの小久保監督が先に動いた。1―1の5回、先発・スチュワートに代えて大津をマウンドへ。助っ人右腕は4回まで69球。レギュラーシーズン中なら、もちろん続投だっただろう。短期決戦ならではの慎重かつ大事を取っての継投だったが、これが裏目に出た。

 DeNAはスチュワートに対して3、4回に無死一、二塁としながら、いずれも得点を奪えなかった。3回は3者連続三振で、4回は送りバントを失敗。不思議なもので、時として野球には「好機が続いてもなぜか得点を奪えない」との状況が生まれる。ベンチにも嫌なムードが漂うものだ。目に見えない「運」のようなものを持っていた投手を代えてくれた。この交代がDeNA側には吉と出た。

 5回の打順は1番・桑原から。初回は二塁打、3回は四球で、中堅守備では2回に好プレーもしていた。小久保監督にしてみれば「運」を持ったラッキーボーイに映ったはず。それゆえの交代の決断だっただろう。シーズン中は先発起用だった大津にはロングリリーフの期待もあったが、いきなり勝ち越しソロを被弾。その後も1点を追加された。

 スチュワートは球威があり、荒れ球。ここにDeNA打線はてこずっていたが、大津はやや球威が落ち、制球もいい。相手にしてみれば、くみしやすかったはずだ。1戦目先発の有原、2戦目のモイネロは、白星とともに長いイニングの投球を想定できたが、3戦目以降はどうしても継投が必要になる。シーズンでブルペンを支えた松本裕、藤井が故障で離脱中。今後も小久保監督だけでなく、両指揮官の継投のタイミングが勝敗を左右するに違いない。

 ≪DeNA勝っても見過ごせない細かいミス≫ただ、勝利したDeNAも記録には残らない細かいミスが目立った。特に5回無死満塁の場面。筒香のフェンス際まで飛んだ右犠飛で、二塁走者の牧はタッチアップできなかった。三進して1死一、三塁にすれば、次打者の宮崎の左飛でさらに貴重な追加点を奪っていたかもしれない。

 無死なら二塁ベースについて、タッチアップに備えるのがセオリー。仮に右翼の柳田が捕球できなかったとしても、それからスタートを切ればOKだ。クッションボール次第では本塁にも還れる。しかし、牧は二塁ベースを大きく離れ、三塁ベースの手前まで行ってしまった。打球判断のミスだが、この場合は三塁ベースコーチが「戻れ!」と声をかけなければいけない。

 初回1死一、二塁では山川のゴロを遊撃の森敬がはじき、併殺を奪えなかった。3回無死一、二塁では梶原が犠打を失敗。勝ったから良し、ではもちろんない。小さなミスは試合の、ひいてはシリーズの流れすら左右する可能性がある。両チームとも肝に銘じて残り試合を戦うべきだろう。

 ≪ソフトバンクつながり欠くも柳田3安打は光明≫日本シリーズの連勝が止まったソフトバンクだが、本拠地での3試合で故障明けの近藤をDHで起用できるのは大きい。この日も初回の適時打を含めて2安打とさすがの打撃だった。ただ、10安打で1得点とつながりを欠いた。この日は出場機会がなかったが、私は2戦目まで6打数3安打だった牧原大がキーマンになると思う。

 小久保監督はシーズン中から「王道の野球」を貫き、先発オーダーも固定することを好む。しかし、この日は不振の柳田を1番から2番に下げてダウンズを1番、そして牧原大に代わる二塁で起用した。柳田は3安打を放ったが、まだ打球が上がっておらず、本来のスイングではない。つながりという意味では、牧原大が打線に入った方が機能するはずだ。

 私がダイエーのバッテリーコーチだった00年。巨人・長嶋茂雄監督と王貞治監督の「ONシリーズ」は、敵地で2連勝した後に4連敗を喫して敗れた。今シリーズも流れはDeNA。今後どう展開していくのか、見逃せない戦いになる。

 ≪シーズン平均約100球≫スチュワートは来日最多の9勝を挙げたレギュラーシーズンで20回先発し、投球回数は120。1試合平均で6回、約100球を投げていた。与四球数はリーグワーストだった西武・今井の70に次ぐ51。荒れ球の傾向が強かったものの、防御率は規定投球回未満ながら1.95と安定していた。

 ≪今季両リーグ最悪96失策≫DeNAは、レギュラーシーズンで両リーグワーストの96失策を記録した。CSでは阪神と対戦したファーストS第1戦から巨人と対戦したファイナルS第3戦までレギュラーシーズンで一度もなかった5試合連続無失策を記録し、5連勝した。しかし、ファイナルS第4戦から第6戦までは計3失策を犯した。

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