「ブギウギ」最終回 「おわり」表記なし「機会があればスピンオフも」
2024年03月29日 08:15
芸能
生演奏は羽鳥善一(草なぎ剛)のモデルとなった作曲家・服部良一さんの孫でこの作品の音楽を担当した服部隆之氏が指揮。編曲された「東京ブギウギ」は善一のピアノ伴奏でスローテンポで始まり、途中から一気に盛り上がる構成。趣里、草なぎ、服部隆之氏の3人が共演する特殊な映像となった。
福岡氏は「時空を超えていろんなことを感じて頂きたいと思いました。あの場面は、スズ子が歌ってきた姿や出会ってきた人々の回想を入れるバージョンもあったのですが、やはり最後はストレートに歌を聴いて頂いた方が良いのではないかと考えました。趣里さんはあの日、朝から練習して午前中に撮影しました。1発OKでしたが、趣里さんが『もう一回歌いたい』と言って、撮影は2回になりました。趣里さんの気持ちが乗った、最後の歌になったと思います」と話す。
この作品がこれまでの朝ドラと決定的に異なったのは本格的な歌唱シーンが存在したことだ。「ラッパと娘」「大空の弟」「ジャングル・ブギー」「買物ブギー」など、物語の節目には必ず印象的な歌があった。
福岡氏は「歌の力は凄い!と私自身も思いました。趣里さんにはもの凄く熱心に歌の練習をして頂き、お芝居でのスズ子と歌手としてのスズ子の両方を立派にやり遂げて頂きました。このドラマは、服部隆之さんを含めスタッフ、キャスト全員でステージを作って来られたことが大きいと思います」と語る。
歌手の笠置シヅ子さんをモデルにし、その壮絶な半生を脚本に結実させた作品。戦争で亡くした弟への思いを込めて「大空と弟」を歌う姿や未婚のまま娘を出産して一人で子育てをしながら歌手を続けて行く姿、自らの出生の問題を乗り越えて未来に向かって行く姿などは史実でありながら劇的だった。
福岡氏は「笠置シヅ子さんを描くのは難しいと思いましたが、脚本の足立紳さん、櫻井剛さんの力でうまく物語を進めることができました。いろんなことが不思議なくらい有機的、立体的にかみ合い、私の想像をはるかに超えた作品になって、私自身が誰よりも驚いています。これは奇跡的な作品だと思います」と語る。
最終回は歌唱シーンではなく日常シーンで終わった。その画面に「おわり」の文字はなかった。
福岡氏は「日常としてまだまだ続いて行くような、自然な終わり方にしました。そこには足立さんの強いこだわりがあって、私も本当にその通りだと思いました。ラストカットに『おわり』と打たなかったのは私のこだわりです。スピンオフを望む声はまだ私のところに届いていませんが、何か機会があればぜひやりたいとは思っています」と語る。
笠置さんは歌手引退後、役者業に専念したが、服部良一さんの銀婚式記念コンサートに特別出演して一度だけ歌を披露したという逸話が残っている。見たい物語がそこにまだある。
◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部専門委員。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。