石破茂氏 大逆転で自民新総裁 過去苦渋なめた決戦投票で歓喜 9人乱戦も“5度目の正直”
2024年09月28日 04:40
社会
選挙管理委員長の逢沢一郎衆院議員が決選投票の結果を読み上げると、石破氏は何度もうなずき、眼鏡を外して手で両目を拭った。
「もう一度、皆が笑顔で暮らせる、安全で安心な国にするために石破茂、全身全霊を尽くしてまいります」
壇上に上がり、仲間に呼びかけた。
1回目の投票は、党所属の衆参議員1人1票の「国会議員票」368票と、全国の党員・党友の投票結果で配分する「党員票」368票の合計736票で争った。議員票は“本命”とも目されていた小泉進次郎元環境相が75票で1位。2位は高市氏の72票。議員票が弱点の石破氏は、3位ながら46票と大きく水をあけられた。頼みの綱の党員票では108票を獲得したが、選挙戦終盤に猛追を見せた高市氏が109票と上回ってきた。小泉氏は61票で脱落。石破氏は合計154票で、181票の高市氏と決選投票にもつれこんだ。
2度目の挑戦だった2012年。石破氏は199票で、141票の安倍晋三元首相と決選投票。安倍氏108票に対し89票で逆転負けした。
「最後の挑戦」と明言して臨んだ今回、12年前の悪夢を払拭する大逆転だった。カギを握っていたのは首相の動向だった。この日朝、首相は旧岸田派のメンバーに「決選は高市氏以外。党員票が多い方に投じてほしい」と一気に指示を下ろした。40人台の固まりを維持し、退陣後はキングメーカーの座を狙う首相。高市氏では自身の政策の継承が困難とみていた。石破氏が路線を継承すると明言していたことも乗りやすい要因だった。
また、極端に保守的な発言を繰り返す高市氏では“選挙の顔”として不安に思った議員もいた。立憲民主党の新代表に就いた野田佳彦元首相は24日に、次期衆院選では「穏健な保守層まで取りに行く」と明言。自民党も、穏健保守層の大部分を占める無党派層の支持を得ないと選挙に勝てない。多くの議員が、高市氏ではこの層が離れると懸念した。
高市氏は前回は旧安倍派に支えられたが、今回は盤石な支持ではなかった。党関係者は「1回目の小泉氏が獲得した票の少なくとも75%は石破氏に流れた。岸田派も政策でかみ合わない高市氏を避けたのでは」と話した。
決選投票前の演説で、高市氏は首相にねぎらいの言葉をかける余裕も見せ、勝利を確信したかのようにも見えた。結局、その首相に最後の最後にうっちゃられた。結果的に石破新総裁は“岸田派が安倍派を制した”ことで誕生した形となった。
≪「政党法」制定&「防災省」創設に意欲≫
石破氏は物価高を踏まえ、新たな経済対策を策定し、2024年度補正予算の編成を指示する方針。年末までに決める25年度予算編成で賃上げやデフレ脱却、成長型経済に向けた施策を示せるかどうかが課題だ。税制改正では防衛力強化のための増税の開始時期について判断を迫られる。
総裁選公約の柱に位置付けたのは政治改革だ。派閥裏金事件を受け、政治資金の透明性向上に最大限努力すると説明。総裁選では、政党のガバナンス(組織統治)向上を目指す「政党法」制定を主張した。政策集には自民の党是である憲法改正に関し「首相在任中の発議を実現する」と明記した。かねて提唱する「防災省」の創設や、日米地位協定の改定にも意欲を見せる。
【石破新総裁一問一答】
――衆院解散はいつ。
「野党の方々とも論戦を交わした上でご判断をいただきたい。しかし、なるべく早く国民の審判を賜らなくてはならない。その2つを合わせて適切な時期を判断したい」
――既に決まっている人事は。
「まだ白紙。いろんな方の能力を最大限に発揮するような人事を行う。(総裁選で戦った8人には)それぞれの最もふさわしい役職にお願いする」
――旧派閥のバランスには配慮する?
「どの派閥から何人ということは考えない。結果的にバランスが取れたものになると考えている」
――今後党内をどうまとめていく?
「一丸となって一つ一つの選挙に全力を尽くすことが党をまとめることにつながると思う」
――防災省の創設について。
「今の内閣府の防災担当の予算、人員は決定的に足りない。人員の拡充、予算の増額は即座に可能。それが今後の内閣府の外局としての防災庁、あるいは防災省につながる」