石破新総裁 首相就任前に解散“フライング”発表 豹変の背景は?党関係者「今までの自民党と変わらない」

2024年10月01日 05:30

社会

石破新総裁 首相就任前に解散“フライング”発表 豹変の背景は?党関係者「今までの自民党と変わらない」
 自民党の臨時総務会で写真に納まる(左から)小泉進次郎選対委員長、鈴木俊一総務会長、石破茂総裁、森山裕幹事長、小野寺五典政調会長=30日午後、東京・永田町の党本部 Photo By 共同
 自民党の石破茂総裁は30日、党本部で記者会見し、次期首相として衆院選を10月27日投開票の日程で実施すると表明した。9日に衆院を解散する意向で、公示は15日となる。首相就任前に衆院選日程を明言するのは極めて異例。立憲民主党の野田佳彦代表は「国会軽視だ。不見識極まりない」と批判した。
 石破氏は、各自治体の選挙準備の観点から就任前に表明したと説明。しかし、きょう1日の新内閣発足を受けた会見で表明すればよく、説得力はなし。政府関係者は「報道されたからだが、“決まっていない”と押し通すべきだった。発言が軽すぎる。あり得ない」とこき下ろした。

 臨時国会は1日召集。4日に衆参両院で所信表明演説、7日から各党代表質問を行う日程が想定されている。与党は会期を9日までと野党に提案。この窮屈な日程の中で同日までに党首討論か衆参両院の予算委員会を開催し、その後に解散する段取りだ。9日解散なら投開票まで18日間。戦後2番目に短い。

 総裁選では、答弁能力が不安視された小泉進次郎選対委員長が予算委回避狙いと受け取れる言動をする一方、石破氏は「国民に判断材料を提供するのは政府、与党の責任」として、一定程度の日数を確保した予算委開催を主張し自身の論戦力をアピール。このため、投開票日は11月10日が有力視されていた。しかし、短期決戦にシフト。代表質問のような一方通行ではない議論をする日は1日だけになるとみられる。

 石破氏豹変(ひょうへん)の背景にあったのは、森山裕幹事長の進言。選挙情勢の分析にあたる党関係者は「野党に選挙協力など陣容を整える時間を与えたくなかった」と指摘。さらに「日程をずらせば、閣僚や党幹部の失言やスキャンダルのリスクが増えるだけだ」と本音をこぼした。自民党の一部幹部らは昨年、東京地検特捜部による裏金事件捜査の動きを察知し、岸田文雄首相に早期解散を進言。首相は判断をためらい、総裁選不出馬に追い込まれていった。一連の進言劇には森山氏も関わっていたとされている。

 裏金事件で逆風が吹き荒れる中での衆院選。過半数を獲得できても現有議席からの減り幅次第では、求心力どころか遠心力が働く展開も予想される。政権基盤がぜい弱な石破氏。延命のための豹変とも言えそうで、野党関係者は「まさに党利党略、個利個略」と批判。党選対関係者は「国民が期待した姿と違う。今までの自民党と何も変わらない」と有権者の投票行動に影響するとの懸念を示した。

《麻生氏 最高顧問就任も写真は一緒に写らず》 自民党はこの日の臨時総務会で党四役などの役員人事を正式決定した。最高顧問には、石破氏と“犬猿の仲”とされる麻生太郎元首相が就いた。麻生氏は「全力を挙げてまい進させていただく」と硬い表情であいさつした。ただ、会の最後に行われた写真撮影には参加せず。石破氏にひと言かけて退室した。

《裏金議員への態度もブレブレ》 石破氏は出馬表明の際「(裏金議員を)公認するにふさわしいかどうか徹底的に議論すべきだ」と次期衆院選での非公認をにおわせたが、次第にトーンダウン。総裁選候補者を対象に共同通信が実施したアンケートには「新たな疑惑ではなく、新たな事実が判明すれば必要な対応を検討する」と回答し、再調査への姿勢を変えた。株式の売却益など金融所得課税の強化も主張していたが、他候補者から反論が相次ぐと、こちらもトーンダウンしていった。

《“石破ショック”株価大幅値下げ》 週明け30日の東京株式市場は全面安の展開になった。日経平均株価(225種)は急落し、下げ幅が一時2000円を超えた。自民党の石破茂総裁が発足させる新政権では、日銀の追加利上げや増税が進むとの警戒が強まり、市場に「石破ショック」が広がった。終値は前週末比1910円01銭安の3万7919円55銭。終値の下げ幅は今年3番目の大きさだった。石破氏は総裁選の政策で金融所得課税の強化や法人税引き上げに触れた。これを投資家が警戒したとみられる。

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