事件発生から58年 88歳袴田巌さん無罪確定へ 検察が再審控訴断念 検事総長「申し訳なく思う」

2024年10月09日 05:30

社会

事件発生から58年 88歳袴田巌さん無罪確定へ 検察が再審控訴断念 検事総長「申し訳なく思う」
静岡地裁の再審無罪判決から3日後に開かれた集会で、あいさつする袴田巌さん。右は姉ひで子さん=9月29日、静岡市 Photo By 共同
 1966年の静岡県一家4人殺害事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の裁判をやり直す再審で、無罪とした静岡地裁判決に対し、畝本直美検事総長は8日、控訴しないと表明した。事件発生から58年。検察は9日に上訴権を放棄する方針で、無罪が確定する。畝本氏は談話で「結果として相当な長期間、法的地位が不安定な状況に置かれた。申し訳なく思う」と謝罪した。最高検は再審請求手続きが長期間に及んだことについて検証する方針。
 10日が控訴期限だった。戦後、死刑事件の再審無罪判決は袴田さんで5例目で、過去4例は検察が控訴せず確定していた。

 検察側は再審公判で有罪を主張した。畝本氏は談話で、静岡地裁判決が捜査機関による証拠の捏造を認定した点に「強い不満を抱かざるを得ない」とした。

 一方で袴田さんが長期間、法的地位が不安定な状況に置かれたことを挙げ「熟慮を重ねた結果、検察が控訴し、その状況が継続することは相当ではないとの判断に至った」と説明した。検事総長が談話を出すのは異例。

 袴田さんの姉ひで子さん(91)は静岡市で記者会見し「裁判が終わるということでうれしい。苦労がすっ飛んだ。喜びしかない」と話した。主任弁護人の小川秀世氏は、冤罪の責任を問う国家賠償請求訴訟を検討していると明らかにした。

 9月26日の再審判決は、犯行着衣とされ、事件の約1年2カ月後に袴田さんの勤務先だったみそ製造会社のみそタンクから血痕に赤みが残った状態で見つかった「5点の衣類」について、捜査機関が発見に近い時期に血痕を付け、隠したと認定。自白調書も、警察と検察が連携して「非人道的な取り調べで作成された」と判断した。これらを排除して残った証拠では、袴田さんが犯人とは認められないと結論付けた。

 袴田さんは66年に逮捕され、長時間の取り調べで「自白」したが、初公判で否認に転じた。80年に死刑が確定。2014年、静岡地裁の再審開始決定で釈放された。

 袴田さんの弁護団は静岡地裁判決を受け、検察側に控訴しないよう申し入れていた。事件の遺族の男性は検察の控訴断念を受け、共同通信の取材に「裁判所が無罪の判決をして、検察が判断したこと。受け入れるしかない」と話した。

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