“平成の三四郎”古賀稔彦さん死す がん闘病、昨年5月に腎臓片方摘出…53歳早すぎる旅立ち
2021年03月25日 05:30
柔道
今年に入ってからは痛みを和らげるためのモルヒネ投与も受けており、この日早朝に自宅で息を引き取った。弔問した関係者は「(自宅併設の古賀塾の)道場でキレイな顔で眠っていましたね」と様子を語った。
佐賀県出身の古賀さんは小1から柔道を始め、中学から柔道私塾の名門・講道学舎に入門。全日本柔道連盟(全柔連)元強化委員長の吉村和郎氏らの指導の下で才能を開花させた。世田谷学園高時代は全国高校総体を2連覇。日体大3年だった88年にはソウル五輪に出場した。しかし、金メダル最有力とされながら3回戦敗退。初の挫折を味わった。
キャリアのハイライトは、2度目の五輪となった92年のバルセロナだった。現地入り後の調整練習で講道学舎の後輩でもある78キロ級代表の吉田秀彦(現パーク24総監督)と一本勝負をした際に、左膝じん帯損傷で全治1カ月の大ケガを負った。歩くこともままならない状態で、指導者たちは棄権の可能性も探ったほどだった。
だが、大嫌いだったという痛み止めの注射を打ち、コーチに背負われて当日の計量会場入り。左膝への負担を考え、伝家の宝刀だった一本背負い投げを極力自重しながら、並み居る強豪を次々と破り金メダルを獲得した。帰国後の検査では左膝以上に重症だったのが胃潰瘍。猛烈な重圧にも打ち勝った精神力による偉業だった。
90年には体重無差別で争われる全日本選手権にも挑戦。決勝ではバルセロナ五輪95キロ超級銀メダルで50キロ以上も重い小川直也に一本負けしたが、中量級選手として「柔よく剛を制す」を体現した戦いぶりが称賛された。
シドニー五輪代表を逃した2000年には指導者に転じ、04年アテネ、08年北京五輪を連覇した谷本歩実らを育てた。03年に川崎市内に町道場「古賀塾」を設立。07年4月には環太平洋大柔道部の総監督に就任するなど、後進育成にも尽力した。
5月10日には佐賀県内で東京五輪の聖火リレーのランナーを務 める予定だった。日体大の後輩で古賀さんの再来とも言われる阿部一二三らが活躍する大舞台を見ることなく、旅立ってしまった。
◆古賀 稔彦(こが・としひこ)1967年(昭42)11月21日生まれ、佐賀県出身。小1で柔道を始め、中学から柔道私塾の名門「講道学舎」に寄宿。東京・弦巻中3年で全中を制覇。世田谷学園に進み、高2、3年時に全国高校総体個人戦を2連覇。86年4月に日体大に進み、嘉納杯、正力国際など各種大会を制して88年ソウル五輪代表に選出。92年バルセロナ大会の71キロ級で金メダル、96年アトランタは78キロ級で銀メダルを獲得した。世界選手権は89、91、95年に優勝。90年には体重無差別で争う全日本選手権で準優勝を果たした。段位8段。得意技は一本背負い。愛称は「平成の三四郎」。1メートル69。血液型A。
《伝家の宝刀・一本背負いは芸術の域》古賀さんの講道学舎入門時、指導者の吉村和郎氏にたぐいまれな背筋力を評価され得意技とした。右肘を壊した影響で一本背負い専門となっていったとされる。全柔連の金野潤強化委員長は「みんなまねしたけど誰もまねできなかった」と回想。背筋力の強さはもちろん(1)相手を上に持ち上げる浮力(2)その浮いた体の下に自分の体(背中)を滑り込ませる回転力(左右)(3)前に相手を持って行く回転力(前後)、という3つのバランスが抜群だったと分析した。
さらに、相手を前に崩す一本背負いと正反対に、相手を後ろに倒す捨て身小内刈りも得意としており、相手が防御しづらかった点も指摘。「何万回も稽古して磨き上げた名人芸だった」と評した。
おすすめテーマ
2021年03月25日のニュース
特集
スポーツのランキング
-
ヤマハ発動機 27日の神戸製鋼戦へ先発6人入れ替え 五郎丸は出場メンバー外れる
-
羽生結弦、練習でSP上々予行「納得できる演技を」午後11時51分に出陣
-
宇野昌磨、再アタックで4―3回転成功 午後11時5分にSP
-
高安 単独トップ守る 照ノ富士は大関復帰へ“目標達成” 貴景勝はカド番脱出
-
鍵山優真、ノーミス最終調整「上位を狙って」午後10時5分に世界デビュー
-
陸上の橋岡優輝が日大卒業式に出席 五輪出場へ「ヨガを始めたい。動きの柔軟性にもつながる」
-
賞金ランク1位の小祝さくら 2週連続Vが懸かるも平常心「いつも通りの感じでできれば」
-
渋野日向子 渡米前最後の試合を前に決意「3試合やってきたことの集大成」
-
国際柔道連盟が古賀さんの訃報に「芸術家が去った。異次元の輝きを放つ伝説の一人」
-
【鶴竜一問一答】「パパはもうお相撲さんじゃないんだよ」 「協会の看板を背負う力士育てたい」
-
西地区首位のジャズが3連勝 東地区ではバックスが8連勝で3位から2位に浮上
-
女子バレー・江畑幸子が現役引退「思うようなプレーが出来ていませんでした」 ロンドン五輪銅に貢献
-
鶴竜が引退会見 白鵬に感謝「高い目標を追いかけたから自分も横綱なれた」
-
柔道・阿部一二三 古賀さんの「豪快な担ぎ技で五輪優勝」誓う
-
ミラノ・石川祐希がプロ初タイトル「成長証明できた」クラブ史上初の欧州V
-
丸川五輪相は真っ赤な衣装で聖火リレーの出発式に出席「日の丸の赤」
-
聖火リレースタート 橋本会長「涙が出た」丸山桂里奈「福島のアスファルトが感謝を受け取ってくれた」
-
ラプターズが連敗を9で阻止 西地区5位のナゲッツに快勝 渡辺は4試合ぶりに出場も無得点
-
紀平梨花、女子フリーは日本時間27日午前5時38分に登場
-
第1走者「なでしこ」 V字フォーメーションで“復興の象徴”駆け抜けた 聖火リレー、福島からスタート
-
石原さとみ「聖火リレーに対する意見や考え方は様々でいいと思う」出発式典であいさつ
-
サンドウィッチマン、石原さとみが登場 聖火リレー出発式典
-
サンドウィッチマン富澤たけし 聖火リレー出発式典でも“らしさ”「あれ、森さんはいない」
-
太鼓演奏、フラガールの舞い 聖火リレー開始前パフォーマンスで福島復興支援への感謝
-
古賀さん 愛弟子谷本さんに昨夏“最後の手紙”、師の教え守り「常に前へ進む」
-
“平成の三四郎”古賀稔彦さん死す がん闘病、昨年5月に腎臓片方摘出…53歳早すぎる旅立ち
-
古賀さん母・愛子さん 闘病知らなかった「心配かけないようにしたのかな」
-
講道学舎では付き人、古賀さんと強い絆 吉田氏「私から人生の金メダルを」
-
谷亮子氏、古賀さんは「最も尊敬する柔道家」92、96年五輪に同時出場
-
バルセロナ五輪で日本男子監督、上村講道館館長 古賀さん訃報に「早すぎる」
-
阪神・佐藤輝の父博信さん絶句…日体大時代に古賀さんと同期で主将・副主将
-
古賀さん足跡 小1で柔道始める、バルセロナ五輪金、アテネ五輪で愛弟子V
-
鶴竜が引退 35歳、5場所連続休場のまま…年寄「鶴竜」襲名し後進育成へ
-
「好きで入ったんです」鶴竜入門の橋渡し役が明かした血相変え詰め寄られた日
-
霧馬山 兄弟子・鶴竜引退に「つらい」昼寝から目覚めて知りビックリ
-
朝乃山 V圏残った!3大関やっと白星そろい踏み、引退鶴竜には感謝
-
照ノ富士 大関復帰あと1、鶴竜引退に「自分もやらないといけない」
-
翔猿 粘り勝ちでVへ望み「勝ててうれしい。一番一番集中していく」
-
紀平 2位発進、逆転で初世界一へ1・92点差「全てのジャンプ伸ばせる」
-
坂本 先陣切り6位「自分なりに思い切ってできた」フリーで逆襲狙う
-
宮原“ミス・パーフェクト”らしからぬミス連発16位「緊張してしまった」
-
岡崎真氏 羽生とチェンの一騎打ち、勝敗分ける4回転ジャンプ 高難度か質か
-
羽生 SPは33人中29番目滑走 練習で4回転サルコー、トーループ決める
-
宇野 調子上向き「楽しんでやっていきたい」鍵山は「ノーミスで」
-
聖火リレー25日スタート 11年世界一なでしこJ・岩清水が手記「スポーツの力の素晴らしさ思い出して」
-
聖火リレー25日スタート 11年世界一なでしこJ監督・佐々木氏手記「コロナと闘う世界に感動と勇気を」
-
澤さんは体調不良で聖火リレー辞退 ノルディック暁斗、フィギュア宇野、広末涼子も
-
女子空手五輪代表・植草「竹刀で顔面突かれた」、恩師・香川氏パワハラで「負傷」と告発
-
体操女子エース・村上 得意の床運動の曲変更「自分にしかできない床を」
-
フェンシング男子・山田 エペで初の五輪代表、ランキングで決定
-
中口&山田が初の五輪代表 ライフル射撃代表再最終選考会
-
大坂 全豪優勝以来の実戦に「楽しみ」、マイアミ・オープン開幕
-
パラ陸上男子マラソンの永田「障がい者の凄さ伝えたい」、東京パラ出場濃厚
-
渋野、19年大会覇者の河本と同組 アクサ・レディース26日開幕
-
中学男子は本大志、女子は清本美波が首位発進
-
三浦璃来・木原龍一組 息の合った演技で64・37点 ペアSP