【元横綱稀勢の里コラム】合格点デビューだった大の里 出世スピードではなく、大切なのは心技体の基礎

2023年06月07日 07:00

相撲

【元横綱稀勢の里コラム】合格点デビューだった大の里 出世スピードではなく、大切なのは心技体の基礎
<夏場所11日目>勝ち名乗りを受ける大の里(撮影・久冨木 修) Photo By スポニチ
 連日満員札止めの盛況だった大相撲夏場所で、弟子の大の里がデビューしました。2年連続の学生横綱で史上4人目の幕下10枚目格付け出し。場所前から大きな注目を集めるなか、成績は6勝1敗でした。7戦全勝で1場所での関取昇進も期待されましたが、大事なのは出世のスピードではなく、最終的にどこまで行くか。本人にもそう言い聞かせていましたし、成績的には頑張ったと思います。
 私は15歳でこの世界に入りました。実績があるわけでもなかったし、デビュー当時に緊張はなかったですね。緊張感を味わうのは新十両とか新大関とか、そういう時だったと思います。それを考えれば前相撲を経験せず、いきなりデビュー戦から大勢のお客さんの前で相撲を取るわけですから大変だったと思います。

 負けた相撲は最初の一番(石崎戦)。緊張もあったようです。動きがぎこちなかったようにも見えますが、ポイントは土俵際でした。私も現役時代、白鵬に突き落としで3連勝したことがありました。そこから強くなって横綱になれたと思っています。そして、私も土俵際で突き落としを食らって何度も悔しい思いをしてきました。まさしく、これが相撲なのです。土俵際の強さを鍛えていかないと、今後も同じような負けを繰り返します。相手との距離感、土俵際の体の位置など大の里には、いい勉強となったはずです。

 弟子ですから多少厳しい目線で見ていますが、間違いなく言えるのは基礎が足りていないということ。まだまだ鍛錬が必要です。攻めの甘さもあるし、潜在能力は高いから幕下で通用しているところもある。寄せ方も、立ち合いも甘さがある。心技体という言葉があるように、技術に加えて心も体も充実しないといけません。課題はたくさんあります。

 アマ時代の実績は素晴らしいものがありますが、プロに入れば「新弟子」。私や友風の付け人として身の回りの世話や支度部屋の雰囲気、いろいろと経験させました。5日からは相撲教習所にも通っています。本人に学ぼうとする意欲がありますし、稽古場で基礎を中心に鍛え、進化を遂げてもらいたい。

 名古屋場所は十両昇進を目指すことになります。日体大の1年先輩、高橋も夏場所で6勝。2人で切磋琢磨(せっさたくま)してさらなる成長を期待しています。猛暑の名古屋は調整が難しい場所です。体調管理を含め「勉強」は続きます。 (元横綱・稀勢の里)

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