松田力也 砂に描いた背番号10への思い きついビーチトレでつかんだ自信 正司令塔争いにケリつける
2023年08月22日 04:45
ラグビー
素足のため力強く足を上げないと進まない砂のコート上でジョギング19往復からスタート。腿上げ、ステップとさまざまなバリエーションをこなす。試合中はクールに、オフは笑顔を絶やさない男が苦悶(くもん)の表情で悲鳴を上げた。
「きつい!でも、意味のあるきつさ!」
体の正しい動きを身につけるために取り入れている砂上でのトレーニング。「グラウンドだったらスパイク(の踏ん張り)でターンできるところが、砂の上では動きが悪いと滑ってしまうから、動きのエラーを体感しやすい。不安定な場所では正しい動きが求められる」と佐藤氏。メディシンボールを使ってのパスや、サッカーボールを使ったキックも砂上で行う。松田は「グラウンド上で体の使い方を実感することができる」と効果を語る。
19年W杯では先発出場はなく、アイルランド戦では出番すらなかった。チームは8強入りしたが「選手としては悔しい思いをした大会でもあった」。10番への思いを胸に刻み、大会後に、佐藤氏へ師事した。進化のため見つめ直したのはランやキックの際、瞬時に出力するために必要な足裏と指の強化。定期的に砂上トレに取り組んだことで、「スパイクの中でも指が使える感覚。足指でつかめる感じで踏ん張ることができるようになった。足裏も強くなり、手応えがある」と、足本来の使い方や地面をつかむ感覚も養ってきた。
左膝前十字じん帯断裂の影響で代表活動に参加できなかった昨年10月には、ひたすら歩き続ける“24時間ウオーキング”にも挑戦した。坂道でのトレーニングで下半身も鍛え、強さと安定性が増し、昨季リーグワンではゴールキック成功率85・5%でベストキッカー賞。二人三脚で歩んだ道のりが、血肉となっている。
約2時間に及んだW杯前最後の通称“サトトレ”では、15種類ものメニューをこなした。総仕上げに「100点」と充実の表情で汗を拭った。「19年よりは体の質もフィーリングも違う。自信がある。19年の悔しさを晴らすのはW杯しかない」。進化した肉体でビクトリーロードを突っ走る。
《10番は李承信と“一騎打ち”》日本代表の10番争いは、W杯イヤー本格始動となった6月の千葉・浦安合宿から松田と李承信(神戸)による一騎打ちが続いている。今夏の国内全5試合のうち松田は先発2試合、途中出場3試合でゴールキック4本中3本成功。李承信は先発3試合、途中出場1試合でゴールキック17本中13本成功だった。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチはW杯前最後のテストマッチとなるイタリア戦(26日、イタリア・トレビーゾ)で最終的に見極めるつもりだ。
2人以外にSOをこなせるのは、FB兼任の小倉順平(横浜)とSH以外のバックス全ポジション可能なレメキ・ロマノラヴァ(東葛)。指揮官はメンバー選考の際に、「複数ポジションができる選手を重要視した」と話しており、リザーブにはユーティリティー選手を配置する可能性もある。
◇松田 力也(まつだ・りきや)1994年(平6)5月3日生まれ、京都府出身の29歳。伏見工(現京都工学院)、帝京大から17年にパナソニック(現埼玉)へ。大学4年の16年6月カナダ戦で代表戦初出場し通算32キャップ。野球好きで憧れのアスリートは同世代の大谷翔平。趣味はコーヒーを豆からひくこと。試合前ルーティンはスパイク、キックティーを奇麗にすること。1メートル81、92キロ。
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