“二刀流”茨城トヨペット野球部 全員が自動車販売の営業担当、練習は週2回のみも「時代の先駆者に」

2023年08月09日 20:00

野球

“二刀流”茨城トヨペット野球部 全員が自動車販売の営業担当、練習は週2回のみも「時代の先駆者に」
監督も部員も硬式野球部全員がセールスコンサルタントとして仕事にも全力の茨城トヨペット Photo By スポニチ
 茨城県水戸市に本拠地を置く社会人野球チーム茨城トヨペット硬式野球部は、部員全員が自動車を販売するセールスコンサルタント(営業担当)という珍しいチームだ。40人の野球部員で月の受注台数は100台を目標にしている。
 野球に限らずどんな競技でも「企業スポーツ」である以上、選手には採用の段階から「特別枠」が設けられ、入社後も営業などの現場の第一線というよりは会社の人事・総務や福利厚生を担当する部署に配属されるケースが多い。社会人野球の全国大会に出てくるようなチームならばなおさらだ。午前は仕事、午後から練習と野球寄りの生活になる。

 ある社会人野球の関係者は言う。「運営費に関しても年間1億から1億5000万円ぐらい予算があるチームは少なくない。プロ顔負けの施設や練習環境が整うところも多く、やはり全国大会に出場できるようなチームは、いわゆる大企業が多い」。

 高度経済成長期の真っ只中の1963年(昭38)、日本野球連盟に加盟していた企業チームは237もあった。オイルショックやバブル経済の崩壊を境に減少し、リーマンショックの2008年には84チームまで落ち込んだ。現在は95チーム。企業チームは常に社会経済や主要企業の業績悪化の影響を受けやすく休部や廃部に追い込まれこともある。

 06年に創部された茨城トヨペットも実は4シーズン後の09年11月に活動休止を強いられている。18年に活動を再開すると西武やオリックスで監督を務めた伊原春樹氏や元西武の松沼雅之氏をコーチやアドバイザーとして招くなどしながら、会社業績に左右されないようなチーム作りを目指してきた。

 選手たちが勤務する販売店の営業時間は平日午前9時半から午後5時半、土曜、日曜は午前9時半から午後6時、他の社員と同じように勤務し、残業だってある。練習は週2回のみ。特別扱いは一切なし。つまり野球部としての活動は休日を利用することも多い。

 そんな中、野口裕貴監督は社内で常に上位に入るトップセールスだ。22年度は182人いる同社のセールスコンサルタント中、新車受注ランキングだけ見てもトップ20に5人の野球部員がいた。月によっては上位5人中3人が野球部員だったこともある。

 硬式野球部生みの親である幡谷定俊総監督兼部長(同社代表取締役会長)は「仮に40歳で野球をやめたとして、(定年までの)残り25年仕事ができないのでは守れるものも守れない。仕事と野球のバランスを保ちながら成長できれば人としてもかっこいいですよね」と親心をのぞかせる。

 7月に行われた第94回都市対抗野球大会はトヨタ自動車(豊田市)が7年ぶり2度目の優勝を果たした。トヨタ系列の販売会社の中で企業チームとして加盟しているのは全国でも茨城トヨペット1社。福地彬野球部プロデューサーは「選手たちはみんな東京ドーム(都市対抗野球大会)をお客さんや地域の人たちでいっぱいにしたいと思っていますよ」。5月の2次予選・北関東大会では全国大会の強豪・SUBARUに6-5で勝った。「時代の先駆者に」を合言葉に効率的な練習で野球も仕事も全力投球。茨城トヨペットから目が離せない。(写真映像部 河野光希、高橋雄二)

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