重圧とも戦った怪物・佐々木麟太郎の最後の夏 仙台育英戦前に漏らした本音とは…

2023年09月08日 08:00

野球

重圧とも戦った怪物・佐々木麟太郎の最後の夏 仙台育英戦前に漏らした本音とは…
仙台育英との準々決勝の9回2死二、三塁、打席に立った花巻東・佐々木麟は雄叫びを上げる Photo By スポニチ
 慶応(神奈川)の107年ぶりの優勝で幕を閉じた今夏の甲子園。聖地で取材した記者にとって忘れられない一戦が、高校通算140本塁打を誇る佐々木麟太郎内野手(3年)擁する花巻東(岩手)と、準優勝した仙台育英(宮城)との準々決勝だ。9点を追う9回、仲間が必死につないで9番目の打者だった佐々木麟に回した攻撃は、今大会の名場面の一つ。佐々木麟にとって今夏最後の打席で、仲間の期待に応えようとフルスイングを貫いた姿に、試合前日の言葉が頭をよぎった。
 準々決勝前日は休養日。兵庫県西宮市内で行った練習取材に向かうと、多くの報道陣がグラウンドに集結していた。練習開始前、トイレへ行くと、すぐ後に佐々木麟が入ってきた。ほんの数秒。思い切って「ホームラン、打ちたい?」と尋ねてみると、18歳の本音が聞かれた。

 「そうですね。次の試合で1本出てくれたらいいんですけど。打ちたいですね」。岩手大会中から、取材でも何度も本塁打についての質問が飛んだが佐々木麟は「チームが勝つための打撃がしたい」と貫いてきた。

 言葉通り、甲子園でも逆方向への打撃を心がけて、3回戦までは打率5割をマークした。だが、歴代最多となる140本塁打を誇る世代最強スラッガー。準々決勝前に漏らした「打ちたいですね」の一言は、チームの勝利に徹しながらも「甲子園でアーチを描きたい」という1人の高校球児としての夢だったに違いない。

 試合は佐々木麟が二ゴロに倒れて試合終了。試合後の取材では涙を必死にこらえながら、質問をした記者の顔をしっかりと見て答える姿に心を打たれた。取材時間が終わりふと振り返ると、一人残った佐々木麟が両手で顔を覆って泣いている姿が目に飛び込んできた。

 プロ志望を表明すれば間違いなく今秋ドラフトの目玉として注目される逸材。この日流した涙を糧に、ひと回りもふた回りも大きくなって、また甲子園に戻ってきてほしい。(記者コラム・村井 樹)

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