辻発彦氏 オリックス・宮城のピンチをチャンスに変える投球術 第1戦の流れ断ち切った

2023年10月30日 05:30

野球

辻発彦氏 オリックス・宮城のピンチをチャンスに変える投球術 第1戦の流れ断ち切った
<オ・神>4回2死一、二塁、ノイジーを空振り三振に仕留めてガッツポーズの宮城(撮影・北條 貴史) Photo By スポニチ
 【SMBC日本シリーズ2023第2戦   オリックス8-0阪神 ( 2023年10月29日    京セラD )】 【辻発彦 日本シリーズ大分析】阪神が先手を取って迎えた第2戦。負けられないオリックスは宮城が6回無失点と好投し、第1戦でエースの山本が打ち込まれた嫌な流れを断ち切った。本紙評論家の辻発彦氏(65)は、宮城―森のバッテリーが序盤に右打者の内角を徹底して攻めた投球に注目。内角を意識させて、4回のピンチを切り抜けたと分析した。(構成・浅古 正則)
 宮城―森のバッテリーが勢いのある阪神打線をうまく攻めた。打線の1回り目。右打者に対して直球とスライダーで徹底して内角を意識させた。宮城の投球パターンはこの2つの球種で内角を突き、決め球は外角へのチェンジアップ。今季はこれにフォークが加わっている。だが、オリックスバッテリーは1度目の打席で森下、大山、ノイジー、ミエセスにチェンジアップとフォークは1球も使っていなかった。短期決戦の鉄則はいかに内角を意識させるかだが、外の落ちる球をほとんど使わないで3回まで抑えきってしまった。

 これが0―0で迎えた4回のピンチで生きた。2死一、二塁で打席にはノイジー。カウント1―2からの4球目。フォークを外角に落とした。これがボールとなり、2―2となった。5球目は内角への直球。切れもコースも抜群だったが、これもボールとなって3―2。6球目、外角低めにストライクからボールになるフォークを落とすと、ノイジーのバットが回った。

 オリックスバッテリーの思惑通り。試合全体をにらんだ配球が生きたシーンだった。宮城のこんな派手なガッツポーズは初めて見た。それだけ手応えがあった1球だったということだろう。5回以降は4点の援護もあって宮城らしいテンポのあるピッチングも光った。前夜の第1戦は、エースの山本がKO。もう本拠地で負けられないという重圧はあったはずだ。6回無失点で1勝1敗。阪神打線の勢いを止める見事なマウンドだった。

 阪神は宮城のペースを最後まで崩せなかった。西武監督時代の21年は0勝6敗とカモにされた。上背はなく威圧感はないが、プロ2年目なのに大胆な投球をする。カウントが悪くなると、平気でど真ん中に直球を投げてくる。とにかく四球を出さない投手なのだ。

 この試合でもカウントが悪くなっても真ん中付近の直球、スライダーで簡単にカウントを整えていた。阪神打線はその球を狙うべきだったが、四球を意識したのか見逃していた。4回無死一塁で打席に森下。スライダー、直球、直球で3ボールとなった。4球目は高めの直球がストライクとなり3―1。5球目、スライダーがど真ん中に来たが、この球も見逃した。直球一本に絞っていたのか、四球を意識したのか。それでも絶対に振りにいかなければいけない甘い球だった。結局7球目の直球を打って遊ゴロ併殺打。チャンスを広げられなかった。

 日頃対戦がなく宮城の制球の良さを実感していない阪神だけにやむを得ないところはあるが、3―1から甘い球を見逃していては攻略できない。西武の打者ならたとえ3―0からでも甘い球なら打っていく。宮城が四球を出さないことを知っているからだ。結局、宮城から奪えた四球は試合の流れが決まった6回の1つだけだった。

 宮城は6回でお役御免。7回は宇田川、8回は山崎颯、9回は予行演習で抑えの平野佳を使うかと思ったが、小木田で締めた。

 西武監督時代に苦しめられた宇田川、山崎颯の強力中継ぎ陣は簡単には打ち崩せない。2人の魅力は球の速さ。コーナーを突く制球はないが、ストライクゾーンに強い球を投げ込んでくる。交代直後、宇田川は佐藤輝にカウント2―2から3球続けてファウルで粘られた。いずれも見逃せばボールに見える球だったが、佐藤輝は球の勢いに押されてバットを出していた。結局、8球目の高めの直球に空振り三振。8回の山崎颯は木浪に5球を費やしたが糸原、近本に2球ずつ。直球の勢いとフォークで圧倒した。中嶋監督も2人に全幅の信頼を寄せて、試合を任せている。

 第1戦、第2戦とも同じ8―0と少し大味な試合になった。第3戦以降、僅差の試合になったとき、救援陣の比重が高くなる。両チームのせめぎ合いを見てみたい。

 ≪コーナー率は両リーグ3位の10.5%≫宮城が制球力の高さを生かした打たせて取る投球を披露した。レギュラーシーズンでもストライクゾーンの四隅を突くコーナー率で両リーグ3位の10.5%を記録。ゴロを打たせるゴロ率も同5位タイの51%だった。なお、空振り率も10.3%で同13位タイ。三振も奪うことができる総合力の高い投手だ。

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