【内田雅也の追球】試合後の岡田監督が浮かべた笑顔の意味 1勝1敗のタイで、熱狂の待つ甲子園へ

2023年10月30日 08:00

野球

【内田雅也の追球】試合後の岡田監督が浮かべた笑顔の意味 1勝1敗のタイで、熱狂の待つ甲子園へ
<オ・神>試合に敗れ、足早に引き上げる阪神・岡田監督(中央背中)(撮影・須田 麻祐子) Photo By スポニチ
 【SMBC日本シリーズ2023第2戦   阪神0ー8オリックス ( 2023年10月29日    京セラD )】 日本シリーズには「第2戦重視」という考え方がある。V9を達成した巨人監督・川上哲治や、その教え子の西武監督・森祇晶がそうだったと、野村克也が『短期決戦の勝ち方』(祥伝社新書)に書いている。
 <初戦は勝負を度外視していいから、相手の戦力と手の内を確認するという考え方である。確認の作業のなかには、事前に収集したデータと実際に戦って得たデータを照合し、データを修正する作業も含まれる>

 今シリーズ開幕前、阪神監督・岡田彰布が第1戦に制球のいい村上頌樹を起用し「第1戦で探る」と語っていたのも、この考え方を思わせる。

 だが、現実にはオリックスが第1戦を落とし、第2戦を取った。前夜13長短打を放ち8点を奪った阪神打線は4安打で零敗を喫した。

 それに、阪神には2014年日本シリーズでのトラウマと呼ばれる敗戦がある。CSファイナルSで巨人を4連勝で破り進出。ソフトバンクとの第1戦に快勝したが、第2戦で武田翔太の前に沈黙した。6回2死まで1人の走者も出せなかった。特に緩いカーブに戸惑い、打線が狂わされてしまった。勢いは止まり、1勝4敗で敗れた。

 この夜の宮城大弥も80~90キロ台のスローカーブや緩いスライダーが得意で、6回を単打4本、無得点に封じられた。打線は狂わないだろうか。

 ――と書いて思う。若い今の阪神の選手たちが聞けば笑い飛ばすだろう。あの9年前で今もいるのは当時ルーキーの岩貞祐太、岩崎優、梅野隆太郎。シリーズは梅野だけ1イニング守った。トラウマはない。今季もシーズン中、幾度も下降線をたどるピンチを迎えながら、復調してきた。岡田も認める復元力がある。

 野村は<第2戦重視には心理的な根拠もある。同じ1勝1敗でも気分が違う。(中略)勝って、次の球場に移動した方が選手の気持ちも乗るからだ>と書いている。

 「いや、1勝1敗なら十分よ。甲子園に帰ってからよ」と岡田が話すように、第2戦は落としたが、心強い、熱狂の甲子園が待っている。

 8―0で勝って0―8で敗れた。岡田は自身の背番号「80」と同じスコアに「数字は良かったんやけどな」と笑っていた。シーズン中、幾度も完敗後によく見られた、さっぱりした笑顔である。敗戦を引きずっていても仕方ないと分かっている。 =敬称略=
 (編集委員)

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