大谷翔平の“自己犠牲”で成立 ドジャース巨額後払い契約のナゾ解説

2023年12月13日 02:30

野球

大谷翔平の“自己犠牲”で成立 ドジャース巨額後払い契約のナゾ解説
大谷翔平 Photo By スポニチ
 年俸の後払い方式はMLBの労使協定第16条に定められており、近年の巨額契約では決して珍しいことではない。ただ、97%を後払いに回すというのは前代未聞。協定には「後払いの割合や期間に制限はない」という条文がある。自分の年俸を削ってでもチームを強くしたいという大谷翔平の希望を受けたネズ・バレロ代理人はここに着目したのだ。
 後払い分の割合は20%前後が一般的で、これまで最も割合が大きいマックス・シャーザー(レンジャーズ)でも50%。後払い方式を採用した場合、ぜいたく税の対象となる額はインフレ(物価上昇)を加味して現在の価値で算出される。

 大谷の契約は10年総額7億ドル(約1015億円)。通常契約の場合、年俸は7000万ドル(約101億5000万円)だが、97%を後払いとすることで、ぜいたく税の計算式では4600万ドル(約66億7000万円)になるという。つまり、差額分の2400万ドル(約34億8000万円)の「余剰資金」を補強費に充てることが可能となる。

 一部では今回の支払い方式に批判的な声もある。ぜいたく税の負担を回避する抜け道になるからだ。ただ、ここまでの極端な後払い方式は大谷にしかできない。ド軍の同僚ムーキー・ベッツも同方式を採用。12年総額3億6500万ドル(約529億円)で、31%に当たる1億1500万ドル(約166億円)を後払いにしているが、ド軍が実際に抑えられる額は445万ドル(約6億5000万円)にとどまる。今季のMLB平均年俸は490万ドルなので、平均程度の選手を1人獲得できるかどうかだ。

 また、後払い方式では、年俸の受け取りを遅らせる代わりに利子を上乗せさせるケースが多い。最も有名なボビー・ボニーヤは99年にメッツを解雇されたが、残っていた契約総額を11年から72歳になる35年まで、年8%の金利でメッツから後払いで受け取っている。しかし、大谷は無利子。チームを強くしたいという自己犠牲の精神が、前例のない契約を生んだ。

 ド軍にとっては、今後10年間で本来支払うはずだった6億8000万ドル(約986億円)を運用して、株式や債券などの投資で増やすこともできる。球団にとってはメリットしかない。史上最もお買い得な契約で、史上最高の選手を手に入れたといえる。(甘利 陽一)

 ▽ぜいたく税(課徴金) 年俸総額が一定の上限を超えた球団がペナルティーとして支払う。03年に導入された。上限は毎年変動し、超過回数が多い球団は税率も上がる。大リーグ機構に納められた後、年俸総額の低い球団に分配される。23年の年俸総額の基準額は2億3300万ドル(約338億円)。22年には6球団が超過してぜいたく税を科され、2年連続超過したドジャースは最も多い3240万ドル(約47億円)を支払った。

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