【内田雅也の追球】昨秋の熱気が恋しくなる連敗 日本シリーズで見せた集中力、闘志を呼び起こしたい

2024年06月13日 08:00

野球

【内田雅也の追球】昨秋の熱気が恋しくなる連敗 日本シリーズで見せた集中力、闘志を呼び起こしたい
4回、中川の打球を送球できず、内野安打にした佐藤輝 Photo By スポニチ
 【交流戦   阪神0ー4オリックス ( 2024年6月12日    京セラD )】 「球趣」は野球のおもしろみといった意味の言葉だ。最近はあまり使われないようだ。
 この2日間、阪神ファンには何の球趣もなかった。何しろ得点が入らない。2試合連続、今季8度目の零敗だった。

 この夜、阪神に初安打が出たのは6回表1死。木浪聖也が中前にライナーで運んだ。それまで1人の走者も出せず、パーフェクトに沈んでいた。

 オリックス先発の新外国人右腕、アンダーソン・エスピノーザは難敵だった。150キロ台の速球はよく動いていた。何かボールが左右に震えているように見えた。ツーシーム系だろうか。

 もちろん見たことはないが、ヴィクトル・スタルヒンが投げたという「震球」はこんな球を言うのだろう。今のプロ野球初年度1936(昭和11)年から巨人の主力投手として活躍した。「アベックボール」という別名もあった。ボールが2つに見えたというわけだ。

 そんな「動く速球」をどう打つか。以前も書いたが、プロウト(プロのシロウト)・お股ニキは著書『セイバーメトリクスの落とし穴』(光文社新書)で<動くボールは前で打て>と提言している。<動くボールは変化する時間が短く、変化量も小さいのだから、動く前に手前で捌(さば)いてしまうのもひとつの考え方だ>。阪神監督・岡田彰布がよく言う「前で打て」に通じている。

 ところが、凡打でも前で打った打球は少なかった。もちろんナックルカーブなど変化球もあり、事は簡単ではない。佐藤輝明の右飛(6回表)は快打のうちだが、打った球はやや球速の落ちるカッターだった。

 その佐藤輝は7回表2死満塁、「一発同点」の局面で打席が回り、期待は高まったが、救援した左腕・富山凌雅の前に空振り三振。猛虎党のため息が広がった。

 佐藤輝で言えば、守りで3回まで5個のゴロを軽快にさばき、好守も見せていた。無理を承知で書けば4回裏先頭のボテボテを何とかできなかったか。アウトにできれば超美技である。ただ、あの内野安打から結局3点を失ったのだった。

 昨秋激闘を演じた日本シリーズの相手とあって好試合を期待していたが残念な2試合だった。昨秋の熱気が恋しい。きょう13日、もう1試合ある。猛虎たちは、あの集中力、あの闘志を呼び起こしたい。 =敬称略=
 (編集委員)

おすすめテーマ

2024年06月13日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム