藤井棋聖 「21歳11カ月」で最年少永世称号 中原誠16世名人の記録を53年ぶり更新
2024年07月02日 05:30
芸能
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「ここで獲ったのかという思いも強い」。万松寺では無冠だった七段時代、18年度名人戦を観戦した。当時の佐藤天彦名人と羽生善治竜王による第5局。「タイトル戦の雰囲気を間近で勉強させてもらえた」。デビュー以来の29連勝を達成した翌年で、その6年後達成した大記録の余韻に少し浸った。
王手をかけて臨んだ第3局。後手番から、山崎の得意戦法・相掛かりを受けて立った。銀交換に角交換。さらには飛車交換。派手な駒交換の応酬の末に58手目、7筋への「焦点の歩」に続いて藤井が放った痛打、62手目△8二銀。飛車角両取りだ。相手戦力をそいで勝勢を決定づけた。14歳までを過ごした奨励会時代、指導役の幹事だった山崎に改めて自らの成長を示した。
6月20日の叡王戦第5局、伊藤匠叡王(21)に敗れて2勝3敗で自身初の失冠を経験した。タイトル初挑戦だった20年度棋聖戦以来、敗退は初めてで、自身が持つタイトル連続獲得は歴代最多の22期でストップ。昨年10月11日の王座戦第4局で全8冠を独占して以来、254日で全8冠独占が崩れたショックは感じさせなかった。
終局後の記者会見。「永世棋聖」の揮毫(きごう)を持参した藤井に、6月30日の前夜祭で来場した武蔵川親方(元横綱・武蔵丸)についての質問が飛び出した。「(同親方のように)どんな型でも対応できる力をつけるのが大きな目標です」。藤井自身、その現役時代を知らないが、幕内優勝12回の横綱相撲を81マスの盤上で表現していくのだろう。
永世棋聖は史上6人目となり、永世称号8つの年少獲得記録も1971年、23歳11カ月だった中原を2年更新した。53年ぶりの快挙に、藤井は言った。「もちろん光栄なこと。今後の活躍がより問われるのかなと思う」。歩みを止めないからこそ、絶対王者だった。 (筒崎 嘉一)