【REPORT】新たな視点でK-POPの魅力を届ける『KOREA SPOTLIGHT』 次の時代を担う個性派・実力派が勢ぞろい

2024年10月11日 18:30

cotoba/Photo by Taka Onodera
韓国の新鋭アーティストを海外の音楽関係者およびリスナーに紹介する恒例のショーケース『KOREA SPOTLIGHT』が10月9日、東京・渋谷のSpotify O-EASTで開かれた。本イベントは韓国の国家行政機関である文化体育観光部の主催により、ドイツ、メキシコ、タイ、オーストラリア、イギリスなどで行われてきたもので、日本における開催は3回目となる。

ワールドワイドな活躍が当たり前になってきたK-POPシーンだが、アメリカに次ぐ市場規模で、しかも多彩なジャンルが受け入れられる日本に対するリスペクトはいまだに強い。なかでもヒットチャートを意識せずに自身のスタイルを追求するシンガーやバンドにとっては特に魅力的な国であり、今回はこうした状況を反映したラインナップとなった。

cotoba/Photo by Taka Onodera
K-POPアーティストの原石を見つけたい。そんな気持ちを抱いた観客たちの熱い視線が注がれる中、イベントは定刻通りにスタート。最初に登場したのは、男女4人からなるcotobaだ。バンド名は日本語の「言葉」を指し、メンバーのダフネ(ギター/プロデュース担当)によると「歌詞で伝えられないことを演奏と楽曲で表現したかった。こうした試みも言葉のひとつではないか」との思いで付けたという。

4人が奏でるサウンドは〈マスロック〉と呼ばれるジャンルに属するもので、4拍子や3拍子といった大衆音楽でありがちなリズムを意図的に避けながら、一般的ではないコード進行や和音で構成しているのが最大の持ち味となっている。2019年8月の登場から現在までライブ活動を精力的に行っているおかげで、ステージングは華があり、見応えも十分。音楽的にもビジュアル的にも押さえておいて損はないバンドだと言えよう。

HYPNOSIS THERAPY/Photo by Taka Onodera
続いて現れたHYPNOSIS THERAPYも、cotobaに負けず劣らずの個性派である。プロデューサーのJflowとラッパーのチャンユで構成された男性デュオで、2022年10月に初の正規アルバムをリリース後、EPやシングルを数枚出している程度でキャリアはまだ浅い。しかしながらエレクトロニカとヒップホップを強引にミックスしたような熱いダンスミュージックはオンリーワンの魅力を放ち、早くも国内外で高く評価されている。

HYPNOSIS THERAPY/Photo by Taka Onodera
おそらくショーケースに集まった人たちのほとんどが、彼らのライブは初体験だったはず。そんなアウェーなムードの中でも、“これが俺たちだ”とひるむことなく爆音を鳴らし続ける姿に感動したのか、観客も次第に踊るようになっていく。さらに舞台から飛び降りた上半身裸のチャンユは、ライブハウスの1階・2階を動き回って大騒ぎ。瞬時にして相手を釘付けにするテクニックを持つこの2人組は、日本のマーケットでも歓迎されるのではないだろうか。

SURL/Photo by Taka Onodera
韓国の大衆音楽といえば、ダンスミュージックをイメージする人が多いはずだ。しかしながら現地では他にも急成長しているジャンルがたくさんあり、その方面で圧倒的な支持を集める旬のアーティストも少なくない。3番手のSURLと、次に登場したGlen Checkの演奏によって、隣国のロックの魅力を強くアピールできたことは、今回の『KOREA SPOTLIGHT』のいちばんの成果だったように思う。

SURL/Photo by Taka Onodera
SURLは2018年にデビューした男性4人組。ギター2本にベースとドラムというオーソドックスなロックバンドの編成ではあるものの、サウンドは時にファンキーで、時にエレクトロポップ風に。さらにパンキッシュなムードも漂うなど、ロックの枠に収まらない音楽性を持っている。韓国では全国ツアーができるほどの人気があり、昨年は北米やアジアの主要都市を巡回するほどになった彼らを1000人規模のライブハウスで観られるのは、相当レアな体験である。

Glen Check/Photo by Taka Onodera
レアといえばGlen Checkも同様だ。大型の音楽フェスティバル/イベントの常連として知られる3人組で、韓国のロック界を代表する大物と言っても差し支えない。ロックのフォーマットを壊さずにシンセポップやエレクトロニカを落とし込む知的なバンドと言ったらいいのだろうか。彼らの美学は日本の観客にも伝わったはずだが、やはり数曲程度の演奏では物足りない。来年1月に決定した東京・豊洲PITと大阪・BIGCATでの単独来日公演に期待したいところだ。

Glen Check/Photo by Taka Onodera
韓国勢のラストはLIM KIM。本イベントへの参加は2回目である。彼女はオーディション番組でスポットライトが当たり、2012年にプロの道へ。力の抜けたスモーキーなボーカルと洒落たオリジナル曲が人気を集め、すぐにスターダムにのし上がった。だが、安定を嫌ったのか、2016年に活動を一時中断。2019年にいきなり復活すると、以前とは異なるエキセントリックな歌唱とハードコアなサウンドで新たなファン層を獲得している。DJをしたがえたステージでは、自身の魅力をしっかり見せつつ、韓国インディーズのアグレッシブな面を伝える演出が光っており、日本の音楽関係者も興味を持ったに違いない。

LIM KIM/Photo by Taka Onodera
そしてスペシャルゲストとして現れたAile The Shotaは、グルーヴィーかつ甘美なダンスナンバーの数々を歌い上げて、客席を魅了。自ら「K-R&B、K-POPにも刺激をもらっている」と語る通り、彼が生み出すサウンドは韓国のリスナーにも十分通用するグルーヴがあり、『KOREA SPOTLIGHT』の締めくくりにふさわしいものだった。

Aile The Shota/Photo by Taka Onodera
アメリカのビルボードのメインチャートにK-POPの作品が当たり前のように入る時代になって久しいが、一方でヒットする・しないにかかわらず良質のサウンドを提供する自国のアーティストも海外で正当に評価されてほしい——。そのような願いを込めた『KOREA SPOTLIGHT』の定期的な開催は、K-POPのさらなる発展と理解に必要不可欠だろう。来年も引き続き実施してほしいと切に願っている。

(取材・文/まつもとたくお)

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