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タダしい競馬の見方塾 ~阪神ジュベナイルフィリーズ~
2021年12月14日 18:00
ギャンブル
この馬が才能の一端を垣間見せたのが未勝利戦。完全に出遅れながら4角手前で一気に上昇。残り200メートルで先頭に立つと、そこからもう1回伸びて2着馬に2馬身半差をつけた。長く脚を使いながら、坂上で再度、エンジン点火。破天荒なレースぶりは目を引いた。
アルテミスSもスタートはひと息。それでも直線で外から伸び切り、重賞初制覇。そして今回の阪神JFではついにスタートを決めた。荒々しさはあるが学習能力は高い。野球でいえば、155キロを投げるが、コントロールのない「あとはボールに聞いてくれ」というタイプだったのが、フォームを見直し、変化球を覚え、完全無欠の投手へと変わっていくようなイメージ。今や日本のエースへと成長したオリックス山本由伸が重なる。
学習能力の高さはすなわち、教育した者のレベルの高さも物語る。ミルコ・デムーロ騎手のことだ。スタートを決めるようになったことがまず第一。そして騎手との呼吸、つまり折り合いもレースを追うごとに向上した。今回も道中、馬の後ろに付けて、力が入りそうになるのを懸命になだめていた。あの配慮がなかったら、最後にあそこまで伸びたかどうかは分からない。直線でもギリギリまでベルクレスタの直後で風の抵抗を抑えながら、ここぞのタイミングで外に出した。考え抜かれた騎乗だった。デムーロ騎手はこの勝利でJRA2歳GⅠ(朝日杯FS、ホープフルS、阪神JF)を完全制覇。朝日杯FSは実に4勝(10年グランプリボス、12年ロゴタイプ、15年リオンディーズ、18年アドマイヤマーズ)。2歳馬の教育がうまい何よりの証拠だ。朝日杯に関しては全て1番人気馬でない。はっきり言って、素質ある2歳馬はどんどん乗せるべきだと言い切れる名コーチなのだ。
母はスプリンターだった。オークスあたりでは距離の壁を指摘されるようになるだろうが、そこをデムーロ先生がどう克服していくか。半年先の話になるが、すでに楽しみだ。
♤競馬記者A スポニチSIVA運営に携わる競馬記者。取材歴は20年超のベテランで、メディア出演実績も多数。本人いわく「運だけは人一倍」。