【高野進の目】山県“初速”に大きな成長 決勝は実現可能な目標に
2016年08月16日 08:35
五輪
ボルトは最初から記録より勝負に徹していた。ここへ来るまでの過程が万全ではなかったこともあり、予選の時はだいぶナーバスになっていたが、準決勝からは本来の姿に戻っていた。
予想よりも長くガトリンに先行を許したように見えたかもしれないが、終盤で逆転可能な距離は常に保っていた。準決勝から決勝までの間がわずか1時間しかなかったので調整が大変だったはずだが、勝つための最低限のイメージはできていたのだろう。やはり60~80メートルの走りは誰にもまねができない。史上初の3連覇も当然だろう。
日本勢も頑張った。特に山県のスタートの反応時間が0秒109だったのには驚いた。他の選手がフライングで失格した直後にこの数字は素晴らしい。10~15メートルまでの「0からの加速」は他の選手にまったく見劣りしなかった。ピッチアップして上半身を起こしていく次の2次加速もほぼ同じように走れた。これまでは頭を下げて10~15メートルまで行き、そこから頭を上げ掛かったところで一気に水をあけられていただけに、40~50メートルまで互角に行けたのは大きな成長だ。走り自体はすでに9秒台の力をつけているので、ファイナリストはもう夢ではなく、完全に実現可能な目標になったと言っていいだろう。(男子400メートル日本記録保持者、92年バルセロナ五輪8位、東海大体育学部教授)