大人のやり方は嫌いでもテニスは嫌いにならないで!

2023年06月13日 15:20

テニス

大人のやり方は嫌いでもテニスは嫌いにならないで!
女子ダブルスの失格を乗り越え、混合ダブルスで全仏初優勝した加藤未唯(左)とパートナーのティム・プッツ。 Photo By 共同
 【君島圭介のスポーツと人間】テニス全仏オープンの女子ダブルス3回戦でボールパーソンにボールをぶつけてしまった加藤未唯が失格となった。その裁定は釈然としないままだが、その後T・ポイツ(ドイツ)との混合ダブルスを制し、四大大会初優勝を成し遂げた。加藤本人はもちろん、彼女を支えてきた家族や関係者は溜飲を下げただろう。
 混合ダブルスに出場できた加藤は幸運だった。

 5月に行われた日本テニス協会が主催する全国選抜ジュニアテニス選手権大会の結末が関係者の間で波紋を呼んでいる。男女ともに14歳以下の優勝者が「日本代表」に選出されなかったからだ。

 混乱の原因は上記の大会が「兼ワールドジュニアテニス世界大会代表選考会」と銘打ち、選手の参加を呼びかけていることだ。

 ジュニアテニスは特殊だ。関東在住なら小学3、4年生くらいから関東テニス協会に所属し、週末ごとに開催される承認大会に出場する。

 出場は自由だが、大会に参加すればポイントが付き、勝ち上がれば獲得ポイントも増え、もっと大きな大会に出場するチャンスが生まれる。プロのツアーと同じシステムだ。

 選手もその親も、このポイント獲得のために目の色を変えて練習し、安くはないエントリー料を毎回支払い、週末のたびに車を飛ばして関東中を走り回る。学校を休んで個人レッスンを受けたり、オーバーワークで腰や肩を痛めて整骨医院に通う子は普通だ。むしろそこまでしなければポイントは稼げない。

 それを全否定はしない。スポーツの世界で勝利を追い求めることは悪ではない。

 ただ、放課後の友達とのテレビゲームも夏休みの家族旅行も我慢し、痛みに耐えてテニスに打ち込み、全国の頂点に立った。優勝トロフィーを持ち上げた瞬間、きっと「やった!日本代表として国際大会に出場できる」と喜んだだろう。歯を食いしばって頑張ってきて良かった、と…。

 その勝利者から「夢」を奪い取ることは残酷だ。

 開催要項に「注)本大会はあくまで選考の参考にするものであって、優勝が代表決定を意味するものではありません」とある。ところが、この一文はエントリー受付時点ではなかった。後にひっそりと付け加えられたものだ。事実として代表に選ばれた選手は男女とも優勝者との直接対決に敗れている。これでは日本テニス協会の選考は出来レースと指摘されても仕方ないではないか。

 全仏オープンでの加藤の扱いもそうだが、テニス界とはこういった不条理がまかり通るのだろうか。

 日本テニス協会強化本部副部長の肩書きを持つ松岡修造氏はいつも「世界に出ろ」という。この言葉は日本にいると大人に芽を潰されるという暗喩なのかと思ってしまう。

 繰り返すが、優勝者から「夢」を取り上げてはいけない。全国選抜ジュニアテニス選手権大会を制した13歳の少年はショックを受け「練習に行きたくない」と言い出したという。テニスが大好きな子供たちに伝えたい。

 大人のやり方は嫌いでもテニスは嫌いにならないで。

 子供のスポーツだからこそ、結果に成果が伴うべきでないか。日本テニス協会の事情など関係ない。

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