駒澤大学陸上競技部、強さの秘密とは。藤田敦史監督「去年の駒澤チームに挑戦していこう」
2023年10月03日 09:00
駒澤大学陸上競技部。
第34回出雲全日本大学選抜駅伝競走、第54回全日本大学駅伝対校選手権大会での優勝に続き、第99回東京箱根間往復大学駅伝競走でも2年ぶり8度目の総合優勝を成し遂げ、史上5校目の大学駅伝3冠を達成している強豪校だ。
今年も注目が集まるなか、2年連続の三冠達成に向けて駒澤大学陸上競技部が挑む"今"に迫る。
監督方針は「選手との対話を重視」
2023 年9 月1 日、ボディケアカンパニーのファイテン株式会社が開催した駒澤大学陸上競技部の取材会にて、藤田監督はチーム方針についてこう語った。
「(前任の)大八木監督がこれだけの大きなことをやってきたので、ある意味、今の形が完成形という部分もあるかと思います。なので、あまり大きく変える必要はないのかな、というところからスタートしました。ただ、自分が監督になって1番考えたことは、生徒たちに対する接し方です。」(藤田監督)
藤田監督がとくに大切にしているのは、選手との対話だ。
「私には監督としての経験値がまだ少ないので、いつもコミュニケーションをとって、生徒の意見を聞かせてもらいながら自分の意見も出して、きちんと意見のすり合わせをした上で『じゃあこうしていこうか』など方向性を導き出していくやり方をしています。大八木監督も行っていたことですが、私はさらにそれを大事にしていきたいと思っています。」(藤田監督)
前半戦を終えて。藤田監督の総括
「春からのトラックシーズンに関しては多くのことが動き出し、タイトルを取ったレースが多かった印象があります。佐藤が織田記念で優勝、赤星と山川が関東学生対校選手権でワンツーフィニッシュを取るなど、タイトルを取った生徒も多かったな、と。」(藤田監督)
編集部注:第57回織田幹雄記念国際陸上男子GP5000m決勝で佐藤圭汰選手(駒澤大2年)が優勝、第102回関東学生陸上競技対校選手権男子2部ハーマラソンでは赤星雄斗選手(駒澤大4年)が1位、山川拓馬選手(駒澤大2年)が2位。
「私は、現役の頃から“速い選手”ではなく“強い選手”を目標としていて、指導者になった今も同じ考えを持っています。速いだけの選手ではなく、勝負に勝てる選手の育成を念頭において指導しており、そういう意味では個人選手としてタイトルを取った生徒が多かったというところで、こちらが思っていた実績を出してくれたと感じています。ただ、トラックが良かったから駅伝もいい形になるとは限らないので、危機感を持ちつつやっていきたいですね。」(藤田監督)
暑さでやられた夏の練習
「春までは割と“個”に特化した練習のスケジュールでしたが、夏の合宿ぐらいから全体で足並みを揃えていく予定でした。しかし、ご存知のとおり今年は猛暑で、前半戦はかなり暑さに苦しめられました。全体合宿の前半1週間は、暑さにやられた生徒がかなり多かったのですが、後半に入ってからは足並みも揃ってきました。」(藤田監督)
ほか、給水を渡すタイミングや、選手の力量に応じて練習する時間帯を調整することも。今後は選抜合宿や駅伝に向けた合宿が増える。そのあたりから練習内容を大きく変えていくと藤田監督は語った。
「今まではどちらかというと体作りというか、足づくりの部分に集中していたのですが、今度の選抜からはよりレベルの高い生徒たちに絞って質を上げていくチームを組み、駅伝に向けて本格的なトレーニングを始める予定です。」(藤田監督)
すでに駅伝に向けて練習をスタートしている駒大陸上部。故障や体調不良で不調な選手もいたものの、ある程度の選手は回復してきているようだ。今回の取材会を開いたファイテン社は同部にケア専用の機械や寝具などを提供しているが、コンディショニングにどのような影響を与えているのか。
「酸素カプセルやフットマッサージャーを疲労回復に活用しています。カラダを休め、足をケアすることでしっかり疲労回復ができていると思います。合宿中にかなり活用させていただきました。」(藤田監督)
酸素カプセル
フットマッサージャー
「生徒たちにも言っていますが、練習はただやるだけでは成果に繋がらない部分があります。練習をしてきちんと食事をとって、リカバリーするという好循環を生めるようにするのが1番大事なので、その好循環を生むという部分において、ファイテンさんのサポートは非常にありがたいなと思っています。」(藤田監督)
現チームの抱負「去年の駒澤チームに挑戦する」
「前年度3冠をしているチームなので、生徒たちからも”2年連続3冠”という目標が自然と出てきてはいるのですが、それを達成したチームは今までないので、どれだけ難しく大変なことかというのは想像できていると思います。だから年度が変わったタイミングでミーティングしたとき、『”2年連続3冠”っていうのは、前年度3冠達成した去年の駒澤チームに挑戦するという意味合いで捉えていこう』という話し合いをしました。”2年連続3冠”と言ってしまうと、出雲駅伝で負けた時点で『もう3冠できない』とモチベーションが下がってしまうので、前年度3冠したチームに挑戦していこうという目標にしました。言っていることは”2年連続3冠”と一緒なんですけれど、少しでも生徒たちがプレッシャーなくのびのびとやれるようにっていうのは常に意識しています。」(藤田監督)
前年度のチームに対する挑戦、それを越えられるように意識していると語る藤田監督。現段階におけるチームの仕上がりは。
「夏の全体合宿を見ていても、そこにきちんと意識が行っている子と、まだそこまで行っていない子では、どうしても実力差が出てきます。難しい部分ではありますが、やはりワンチームでチームがまとまって行かないと2連続3冠なんて絶対達成できない。とはいえ、必ずしも走り(記録)で引っ張っていく必要もないと思っていて、もちろんそういう生徒も必要ですが、まだそこまで行けてない生徒は、自分自身の競技に対する姿勢や、チームに対して『はたして自分は何ができるのか』と考えるだけでも、チームにとってプラスになります。」(藤田監督)
記録のみ重視しているわけではなく、生徒の心持ちも重要。チームの雰囲気に影響を与えると予想できる。
「一人ひとりがチームのために『これをやる』という目的意識がはっきりしたときこそ、ワンチームになれるタイミングだと思うんです。それができて、ようやく駅伝3冠にチャレンジできるチームになれたということ。ワンチーム作りに向けて、しっかりやっていきます。」(藤田監督)
藤田監督率いる新生・駒澤大学陸上競技部に、今年も熱い視線が注がれている。
プロフィール
駒澤大学陸上競技部 藤田敦史監督
1976年、福島県生まれ。清陵情報高卒業後、1995 年に駒澤大に入学。前監督の大八木弘明(現・総監督)の指導の下、4年連続で箱根駅伝に出場。4年時には箱根4区の区間新記録を樹立。1999 年に富士通に入社し、2000 年の福岡国際マラソンで当時の日本記録をマーク。世界選手権にも2回(1999 年セリビア大会、2001 年エドモントン大会)出場。現役引退後は、富士通コーチを経て、2015 年から8年間、駒澤大のヘッドコーチを務める。2023 年4月、駒澤大監督に就任。
<Edit:編集部>
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