朝食は「パン」より「ごはん」のほうが幸福度が高くなる?吉野家の興味深い研究
2024年06月04日 09:00
株式会社吉野家が、朝食メニューに関するおもしろい研究結果を公開しています。朝食メニューによって「幸せ度」が変化することを、脳活動と自律神経活動の視点から発表しました。
朝食の「質」は「幸せ度」にどんな影響を及ぼすのか
吉野家、東北大学ナレッジキャスト株式会社および東北大学と株式会社NeU(ニュー)と共同で行った研究では、朝食摂取頻度が高い人ほど「幸せ度」が高いことを明らかにしていました。
一方、朝食の「質」が「幸せ度」にどのように影響するかの評価は、食事行動の要因の多さのため容易ではありません。
今回の試験では、東北大学の認知脳科学研究の知見を応用した携帯型近赤外光分析装置(NIRS)を用いて、朝食の「質」の差が、「幸せ度」に関係する脳活動と自律神経活動にどのような差を生み出すのかを評価したものです。
総括「パンより米のご飯のほうが、脳活動が活性化する」
先に総括から。
今回の試験により、米のご飯を中心に味噌汁、主菜、副菜がついたいわゆる和食定食は、パン食よりも脳活動を活性化する食事であることが確認できました。
和食タイプの定食は、脳に効率よく栄養を回してくれる
脳が働くためには、情報処理を司る脳の神経細胞にエネルギーを供給する必要があります。
神経細胞は「ブドウ糖のみ」をエネルギー源としています。一方、脳内にはエネルギー源を保存する場所がありません。
このため、脳を働かせるには常にブドウ糖の供給が必要です。
●疑問1 パンでもいいのでは?
こう聞けば、別にお米でなくともパン食でもいいのではないかと感じるかもしれません。
しかし、朝食の主食は「パン」より「米のご飯」が脳活動の観点から優れていることが、東北大学加齢医学研究所の研究で明らかになっています。
理由は、パンよりも米のご飯のほうが「グリセミック・インデックス(GI)」という数値が低いからです。
GI値が低いと血液中の血糖値の変動が少なくなります。血糖値の変動が少ない方が、脳に効率よく栄養が回ることがわかっています。
●疑問2 おにぎり1個でもいいのでは?
ということは、朝おにぎりを買って食べればいいんだ! と思うかもしれませんが、それではもったいない。
朝食がデンプン質(ブドウ糖)だけでは脳を働かせるのに十分でないことも、東北大学の研究で明らかになっています。
ブドウ糖が脳の神経細胞で有効に使われるには、たとえば以下のような「補助的な栄養素」が必要だからです。
- ビタミンB1(豚肉に多く含まれる):ブドウ糖をエネルギーに変換する際に必要な栄養素
- アリシン(にんにく、ねぎ、ニラなどに含まれる):ビタミンB1の分解を防ぎ、吸収をよくする
- 必須アミノ酸リジン(納豆、味噌、豆腐など豆類、卵黄に含まれる):ブドウ糖代謝の促進に有効
これらの栄養をバランスよく含むのは、ちょうど和食定食というわけ。
上記栄養を補うという視点では、みそ汁付き豚丼や、卵トッピングの豚丼でもよさそうです。
試験結果の概要とポイント
1. 朝食の「質」で脳活動と自律神経活動がどう変わるかを調べるために、20代から50代の男性50人を対象に全8週間のランダム化クロスオーバー試験を行いました。
2. 吉野家の朝定食を摂取した人は、市販のパン食を摂取した人に比べ、認知課題実施時の「脳血流量」が統計的有意に増加し、脳活動が活性化することを確認しました。
3. また、吉野家の朝定食を摂取した人は、朝食摂取前に比べ摂取後に「心拍数」が統計的有意に増加することを確認しました。これは自律神経における交感神経が優位になることを示し、脳を含む身体の臓器の働きが活発になることを示すものです。
試験実施方法
今回の試験では、朝食摂取習慣のある健康な20代から50代で、日中活動をする右利きの男性50名を吉野家の朝定食3種類を食べる人の群(試験食群)、朝定食の半分程度のたんぱく質量で、熱量が同程度のパン食を食べる人の群(対照食群)の2群に分け、それぞれ全8週間のランダム化クロスオーバー試験を行いました。
ランダム化クロスオーバー試験とは、被験者をそれぞれランダムに選定した試験食群と対照食群に対して、2週間のウォッシュアウト(朝食なし)期間をはさみ、交互に介入試験を行い、介入条件以外の影響を最小化して結果を比較する厳密性の高い試験手順です。
試験および計測項目としては、認知機能試験、NIRSによる脳活動計測、自律神経活動計測、およびアンケートによる主観評価を行いました。
主な試験結果
(1)試験食群は対照食群に比べ、認知課題実施時の脳血流量が統計的有意に増加し、 脳活動が活性化することを確認しました。
図表1 試験食群と対照食群との脳血流変化量(RVIP認知課題実施時)の比較
吉野家の朝定食を食べた試験食群は対照食群に比べ、認知課題(RVIP)を実施時の脳血流変化量が統計的有意に増加しました(図表1)。
認知課題を行うことで脳活動が活性化(賦活)すると、脳の前頭葉にある背外側前頭前野(はいがいそくぜんとうぜんや)の「脳血流」が増加することが知られています。今回の試験でも「試験食群」で認知課題実施中に背外側前頭前野の脳血流が増加していることが確認されています(図表2)。
図表2 RVIP認知課題中の脳活動状態の例(WOTによる解析)
(2) 試験食群は対照食群に比べ、摂取後の「心拍数」が統計的有意に大きくなることを確認しました。
試験食群および対照食群ともに、朝食摂取前に比べ摂取後に「心拍数」が統計的有意に増加することを確認しました。さらに試験食群は対照食群に比べて、心拍数の増加量の差が統計的有意に大きくなったことを確認しました(図表3)。
朝食摂取介入時に心拍数が増加するのは、自律神経における交感神経が優位になることを示し、脳を含む身体の臓器の働きが活発になることを示すものです。
図表3 朝食摂取介入前後の心拍数の変化
本研究成果は、5月26日(日)に福岡県福岡市で開催された第78回日本栄養・食糧学会大会において発表されました。
<Edit:編集部>
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