次期監督候補のソフトバンク・藤本2軍監督を「退場!」元NPB審判員記者の“古傷”

2021年10月26日 07:30

野球

次期監督候補のソフトバンク・藤本2軍監督を「退場!」元NPB審判員記者の“古傷”
ソフトバンク・藤本博史2軍監督 Photo By スポニチ
 ソフトバンク・工藤公康監督(58)の後任に藤本博史2軍監督(57)が昇格することが有力と23日に報道された。記者が自宅で知ったのは深夜3時。就寝前に思わず心の“古傷”が痛んだ。
 藤本監督は1度だけ退場処分を経験している。それは記者がNPB審判員だった16年に宣告したものだ。退場の当事者はもちもんだが、退場を宣告する側も苦い後味が残る。退場に到る要因は判定ミスであることが多い。

 16年3月27日。ナゴヤ球場で行われた2軍戦の中日―ソフトバンク戦でコーチだった藤本氏を暴言で退場にした。私はその日に球審を担当したが絶不調だった。その日はどうしても低めのストライクゾーンが広く見えた。

 中日のドラフト1位の左腕・小笠原が初先発。低めで力強く伸びる直球が私の右手を挙げさせた。1番打者だった真砂の低めを「ストライク」と判定。打者の「マジで?」という顔は今でも鮮明に覚えている。ソフトバンクベンチも「低い!低い!」とヤジを飛ばてくる。しかし、私にはストライクに見えるので同じ高さを「ストライク」と言い続けた。

 イニングが進むにつれ、ベンチのヤジは強くなる。4回だったと思う。低めを「ストライク」と判定すると「下手くそが!」と低い声が聞こえた。顔を見なくても声の主は分かった。福岡出身の私にとっては、野球中継の解説者としてもなじみ深い藤本コーチの声だ。「退場!」。ベンチ内の藤本コーチに宣告すると、グラウンドが静まりかえった。直接、抗議をしていないコーチを退場にするのは異例だが、同年1月に米国・フロリダの審判学校で「審判のイロハ」を学び直した私には「審判員への暴言」として退場させるべきケースと確信していた。

 退場の処置は正しかったどうかは分からない。だが、はっきりと言えることは、判定の精度が低かったために試合を混乱させてしまった。冷静になって振り返ってみると「聞こえないふりをした方が、穏便に事が運んだかもしれない…」とも思う。

 2036日前の出来事。私は昨日のことのように覚えているが、藤本2軍監督は覚えているだろうか。そして、許してくれているだろうか。布団の中で思いを馳せた。(記者コラム・柳内 遼平)

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