【内田雅也の追球】開幕3連敗を喫した今の顔こそ真の姿 形相と姿勢に逆襲の期待を持った

2022年03月28日 08:00

野球

【内田雅也の追球】開幕3連敗を喫した今の顔こそ真の姿 形相と姿勢に逆襲の期待を持った
9回、内野に飛球を打ち上げるも全力疾走する大山 Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神0ー4ヤクルト ( 2022年3月27日    京セラD )】 19世紀米国の女性詩人エミリー・ディキンソンは「わたしは苦悩の表情が好き。なぜなら、それが真実の表情だから」と書き残している。米国の野球記者が書いた文章で引用されていた。
 開幕3連敗を喫した今の顔が真の姿なのだ。敗戦後、グラウンドに出て場内に一礼する表情には苦悩が浮かんでいた。眠れていないのだろうか。監督・矢野燿大の目が赤いように見えた。

 似たようなことを野村克也が書いている。著書『弱者が勝者となるために――ノムダス』(ニッポン放送プロジェクト)で<人間は窮地に追い込まれるほど本性が現れる>とある。だから<9回2死、最後の打者となった時、本性が見える>。

 ならば、0―4の9回裏2死無走者。最後の打者として打席に立った大山悠輔を見たか。追い込まれて打ち上げた内野への凡飛に全力疾走していた。あの形相を見たか。

 一塁手が落球すると、大山は悠々二塁に達していた。凡打疾走などいつも、当たり前にやっている大山にとっては当然の姿だろう。しかし、この日の顔は記憶に残った。これが本性である。

 こうした誠実で愚直な姿勢が「あきらめない気持ちを強くする」と言い続けてきたのが矢野だった。選手たちの姿に闘志や勇気をもらいたい。

 仰木彬の話を思い出した。近鉄、オリックスを優勝に導いた監督は、用兵や采配で「マジック」を使う知将だったが根底にあるのは闘志だった。

 「3連敗を食ったら、帳面にその相手との次の3連戦に赤丸をつける。絶対3連勝でやり返すんや、という気持ちでいた」。愛用のノートに赤ペンで印をつけていた。

 ならば、矢野はいま、次のヤクルト3連戦となる4月22―24日(神宮)に印をつけたい。闘志の赤で記したい。

 やられたらやり返す。この日の試合でも斎藤友貴哉が開幕戦で被弾したドミンゴ・サンタナ、安打された長岡秀樹から、ともに三振を奪った。石井大智は前日安打された長岡、被弾したホセ・オスナをともに凡飛に切った。偶然の打順の巡り合わせかどうか、起用した矢野にも「やり返せ」の思いがあったろう。

 彼らの姿勢を見れば、まだまだ、逆襲への期待は持てる。 =敬称略=
 (編集委員)

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