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【内田雅也の追球】阪神ファンの心を詠む にじみ出ていたわれら猛虎の4番への思い入れ

2023年09月23日 08:00

野球

【内田雅也の追球】阪神ファンの心を詠む にじみ出ていたわれら猛虎の4番への思い入れ
虎酔(木割大雄さん)が阪神優勝を詠んだ句 Photo By スポニチ
 阪神ファンの俳人、木割大雄さん(85=尼崎市)からはがきが届いた。「虎酔」の号で1984(昭和59)年から13年間、スポニチ本紙(大阪本社発行版)に連日、阪神を詠んだ俳句を寄せていた。「優勝の一句がようやく出来ました」とあった。
 秋のわが四番打者の泪(なみだ)かな  虎酔

 阪神が優勝を決めたあの日(14日)、大山は歓喜の輪の中で泣いていた。「わが」に、われら猛虎の4番への思い入れ、ともに涙する感激がにじみ出ているようだ。

 同じ句をラジオパーソナリティー、道上洋三さん(80)にも送った。昨年3月末で朝日放送(ABC)の名物番組『おはようパーソナリティ道上洋三です』は終了し、脳梗塞で療養中にある。「彼は大山ファンですから」と、交流が長く深い同志を思いやった。

 優勝決定の試合は「にぎやかに」と妻と孫の家族4人と一緒にテレビで見た。「やったなあ」と喜んだが、作句には苦しんだ。はがきに「負ける時の句はすぐ生まれるのですが、嬉しすぎるとなかなかデキナイモノであります」とあった。

 「負け慣れていると言うのかなあ。優勝となれば、すべてが良しなわけでしょ。これが難しい」

 負けても負けても応援してきた阪神ファンの、どこか屈折した感情か。

 わかる気がする。2007年4月に始まった当欄も17年目で初めての優勝で戸惑った。負け試合の方が書きやすい。

 「バース、掛布、岡田の頃が強烈でした。ほんま、ふるえてました」。あの85年10月16日、21年ぶり優勝した当日は、

 肌寒く勝利の中でふるえけり  虎酔

 と、「ふるえ」をそのまま詠んでいた。

 岡田監督が現役時代、キャンプ地、高知・安芸名物の階段ですれ違った時を思い出すと言う。「ずーっとブツブツ独り言を言うとった。練習内容か何か野球のことです。ああ、ホンマに野球が好きなんやなあ、と感心しましたわ」。だから「解説でもブツブツ言うとったでしょ。はよ帰ってきて監督せいと思うとった」。そして「岡田で優勝するのはなんか当たり前と言うか、当然の成り行きと思うてます」。

 江夏豊さんの俳句の師匠でもある。「江夏が“野球は技術だけでは語れません”と言うとった。気ぃ、みたいなもんもありましたなあ」

 わかる、わかる。阪神と長年付き合っているとわかる。(編集委員)

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