【内田雅也の追球】後攻生かした防戦勝利 熟考しながら泰然と構える

2023年10月20日 08:00

野球

【内田雅也の追球】後攻生かした防戦勝利 熟考しながら泰然と構える
<神・広>戦況を見つめる岡田監督(撮影・奥 調) Photo By スポニチ
 【セCSファイナルS第2戦   阪神2ー1広島 ( 2023年10月19日    甲子園 )】 1―1で終盤を迎え、阪神監督・岡田彰布は防戦だけを考えていた。サヨナラ勝利の後、「打つ打たんまで考えて一喜一憂していたら身が持たんよ」と言った。
 9回裏2死満塁、木浪聖也がサヨナラ打したときも「10回表を考えていた」。桐敷拓馬を6番に入れ、左翼とのダブルスイッチを練っていた。

 とにかく相手に点を与えない。失点しなければ負けない。自ら言う「マイナス思考」を象徴する戦い方である。この守り優先の考え方が、ロースコア接戦での強さを生んでいる。レギュラーシーズンは1点差試合でリーグ最多27勝(16敗)をあげていた。

 7回表は「調子が悪くてもしのぐのはたいしたもの」という伊藤将司を続投させた。

 8回表は石井大智で2死。島本浩也が左打者に連打されると、コルテン・ブルワーと3投手をつぎ込んでしのいだ。

 9回表は同点でも「まずゼロで抑える」と迷わず岩崎優を起用した。

 ホームゲーム、後攻の戦い方である。野村克也の『短期決戦の勝ち方』(祥伝社新書)にクライマックスシリーズの章がある。ホームの優位性を地の利以上に<シーズン上位チームが常に後攻なのは大きい>と書いている。<野球で大事なのは7回以降だからだ。もし同点、あるいはリードされていても「9回裏がある」と思える。この心理的な優越感が意外に試合を左右する>。

 岡田はこの「しのぎ」を試合前半に頭に描いていた。ベンチにどっかりと腰掛け、パインアメをなめながら考えていた。

 <戦況が膠着(こうちゃく)すればするほど動きたくなくなる性分>と著書、その名も『動くが負け』(幻冬舎新書)にある。<「相手はどうしてくるのか」と熟考しているほうが面白いから、ベンチでも静かに構え「こちらからは動かない」と腹に決めている>。

 <ただし>と頭はフル回転していた。<流れは読んでおかねばならない><相手の監督が動くよりも前にその先を想定しておかねばならない>。

 だから8回表2死一、二塁で4番・堂林翔太を迎えた場面も「松山(代打・松山竜平)がくるのはわかっていた」うえでブルワーを起用した。「(相手が)一番わからんピッチャーでいった」と途中加入の新外国人に期待をこめていた。

 つまり、読み通りに動いて勝利をもぎとったのである。 =敬称略=
 (編集委員)

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