【ソフトB・倉野コーチ独占インタビュー】理想は日米の野球融合 名伯楽が“魔改造”を狙う新星は…
2023年12月30日 06:00
野球
「11月に全員と話し、来年、先発かショートリリーフか、中ロングか明確にした。オフの取り組み方で命運が変わってしまうことがある。目指す方向を明確にするのが、役割だと思っている」
――立場を明確にさせる?
「ホークスは競争が激しい球団。激しいがゆえにキャンプではペースが速くなる。それに気付いた。そうなると息切れしてしまう。ピークの持っていき方が変わってしまう。もちろん、実績のない選手は2月1日にどんだけ目立てるかが、1回目の勝負。そうではない選手は早すぎる。2人は確定で決めた」
――その2人は有原、和田。小久保監督が開幕ローテーションを明言した。
「監督、コーチが変わったからといって、それまでの実績に関係なく横一線のスタートは違う。ただ、新しい人が、新しい目で見ると、チャンスが少なかった人が、チャンスをもらえることは多々ある」
――有原とはレンジャーズで一緒だった。キャッチボールが衝撃だったと著書「踏み出す一歩 そして僕は夢を追いかけた」にも書いていた。
「向こうの選手と半年間、キャッチボールをやっていた。7月に3Aで有原と会って、初めてキャッチボールした時に衝撃を受けた。球が速くないのに怖いと思えた。今までの自分の理論がつながるきっかけになった」
――渡米して知った日米の違いは?
「アメリカは生み出すのがうまい、があって、チャレンジしてエラーが出たらまた、改善してチャレンジする。だから進化が速い。新しいことを生み出すスピードが速い」
――では日本は?
「日本はまず、メリット、デメリットを先に考える。ただ、繊細で敏感。アメリカはゼロから1を生み出すのが凄くうまいけど、日本は1を100にできる。車も発明したのは外国だけど、結局、トヨタが一番になる。これは野球も同じだと思う」
――どうすればいいか?
「大谷選手が言った“憧れるのをやめましょう”という言葉は本質を突いている。日本ってこんなにいいところがあるんだというのを見上げすぎて忘れている」
――うまく融合させたい。
「アメリカが凄いところと日本の良さを融合させたい。ハイブリッドになりたい。それができるのは、両方を経験した人間にしかできない。そうして自分を“魔改造”した」
――改めて行って良かった。
「3年前、ホークスを辞めなかったならばと考えると凄く、怖いです。井の中の蛙(かわず)でできた気になっていたと思う。本当に行って良かった」
――ところで3年ぶりの秋季キャンプ。見ていてイメージは湧いた?
「湧きますね。視点が変わった」
――一番、目についた投手は?
「アルメンタは光っていた。フォームと球のギャップが凄くある。凄く軽く投げているのに、150キロをばしばし投げた。あんな19歳は、マイナーのルーキーリーグにいたけど目立つ素材だと思う。凄く楽しみ」
――実績ある投手には何を期待するか?
「来年優勝するためには、新しい選手の突き上げも大事だけど、くすぶっていた選手の復活なくして優勝はありえない。東浜、石川、大関。この3人が鍵を握っている。新しい選手には3人の名前が出ないくらい、突き上げてほしい」
◇倉野 信次(くらの・しんじ)1974年(昭49)9月15日生まれ、三重県伊勢市出身の49歳。宇治山田3年夏に三重県大会準優勝。青学大では4度のリーグ優勝と2度の日本一を経験。大学日本代表にも選ばれた。96年ドラフト4位でダイエー(現ソフトバンク)に入団。プロ通算は11年間で164試合に登板し、19勝9敗1セーブ、防御率4.59。フロントを経て09年からコーチ。1~3軍の投手統括コーチ、1軍投手コーチなどを歴任し、今オフに1軍投手コーチ兼ヘッドコーディネーターに就任した。著書に「魔改造はなぜ成功するのか」。
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