【内田雅也の追球】地味な練習の中にあふれる「滋味」 基本の徹底で、できることを確実に

2024年02月03日 08:00

野球

【内田雅也の追球】地味な練習の中にあふれる「滋味」 基本の徹底で、できることを確実に
シートノックでノイジー(右)の送球が小幡の頭上を越える(撮影・岸 良祐) Photo By スポニチ
 左中間に落ちる打球を処理した左翼手シェルドン・ノイジーが中継手の遊撃手・小幡竜平に投げた送球が高く、跳びあがっても捕れなかった。途端にヘッドコーチ・平田勝男から「高~い!」と声が飛ぶ。もう1本やり直しとなった。
 阪神の沖縄・宜野座キャンプ2日目のシートノックの1シーンである。

 外野手の速く、低い送球は昨年から徹底している。この時は二塁への送球だったが、三塁だろうが、本塁だろうが、「全球カット」の基本方針は変わらない。外野手は中継手(カットマン)まで素早く、低い送球を心がける。走者を刺すという目的以前に、走者や打者走者に余計な進塁を与えないという、監督・岡田彰布の方針である。

 強肩をいかしてダイレクト送球し、走者を刺すといった派手さはない。控えめで、どこか地味な方針に映る。ただし、阪神はこの地味な方針で昨年日本一となったのだ。地味な練習は、一般のファンやマスコミ、ともすれば選手へのうけは悪いだろう。しかし、「地味」は「滋味」に通じている。どこか味わい深い強みになると、チーム全体に染みわたっている。

 岡田はキャンプインを前に「変わったことやる必要もない」と話していた。「基本的には反復やろうな。去年うまくいったこともある。チームとしては継続的に守備から入るということ。おーん。それは一緒や」

 繰り返し繰り返し、基本練習を行うわけだ。岡田は何も選手に難しいことは要求しない。できることを確実に行うように仕向ける。徹底する。

 キャンプ2日目までの練習メニューは岡田が監督復帰1年目だった昨年と全く同じだった。ウオームアップ、ペッパーゲーム(トス打撃)、キャッチボールの後にシートノック、そして阪神伝統の「全員ノック」。昼食後はフリー打撃に特打、特守……と続く。

 変わったのは岡田が球場を後にする時間は遅くなったことだ。昨年は午後3時前後には帰っていた。2日連続で車に乗ったのは4時半。この日はトラ番たちと雑談を含め35分間も話しこんだ。

 「暇やからな。ホテルに帰ってもすることない」と笑う一方、オフに受けた健康診断で異常がなく、より元気になった気がする。「今まで見ていなかった若手が多いからな」と楽しそうに練習を見ていた。 =敬称略=
 (編集委員)

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