【内田雅也の追球】1軍と同じ野球をする阪神2軍 技も心も筋が通ってこそ黄金時代に通じる

2024年02月08日 08:00

野球

【内田雅也の追球】1軍と同じ野球をする阪神2軍 技も心も筋が通ってこそ黄金時代に通じる
2軍の練習を視察した阪神・岡田監督(中)は和田2軍監督(左)と話す(撮影・大森 寛明) Photo By スポニチ
 阪神監督・岡田彰布が今春初めて2軍キャンプを視察した。うるま市具志川野球場で2軍監督・和田豊と並んで立ち、投内連係からシートノックを見つめた。
 このシートノックが見事だった。見慣れていた宜野座の1軍とそっくりだったのだ。いや、選手たちの技術が劣るのは当然だ。まずノッカー(2軍内野守備走塁コーチ・田中秀太)が打つ打球の順序が同じだった。さらに二塁、三塁、本塁への送球がすべてカットだった。短い距離でも外野手は必ず内野手のカットマンに低い送球を心がけていた。1軍が行う「全球カット」である。

 和田に聞くと「うん」と合点したようにうなずき「シートノックに限らず、すべて1軍の野球に従っている」と話した。「岡田監督が就任した直後から、岡田監督の方針に従っている。当たり前と言えば当たり前。2軍から1軍に上がった時に違う野球をしていると戸惑うからね」

 試合になれば短距離ならノーカットの直接送球で走者を刺しにいく場面もある。それは昨年の1軍公式戦でもあった。ただ、基本姿勢としてカットまで低く強く放る。打者走者に余計な進塁を与えない……といった岡田の方針が貫かれている。

 それに和田は「1、2軍が違う野球をやってたら強いチームなんてできっこない」と言った。まさに真理を突いている。

 苦い経験がある。野村克也が監督当時、2軍監督の岡田は野球観の違いに戸惑った。若手の「長所を伸ばす」方針だった岡田に野村は「短所を直せ」と命じた。好調な選手を1軍に推薦しても起用されずに2軍に逆戻りしてきた。「岡田はバントが嫌い」と決めつけ非難された。和田は現役晩年で、そんな不具合を目の当たりにしていた。

 かつてドジャースの会長秘書だったアイク生原が1988年ごろ、NHKの番組で語った話を覚えている。「メジャーを1軍とすれば、最下部のドミニカアカデミーは9軍。ドジャースは1軍から9軍まで同じ野球をやる。同じ指導法で統一されている」。大リーグで最初にファーム組織の充実をはかったドジャースは黄金時代を築いた。

 昨年は18年ぶりにリーグ優勝。今年は連覇を果たして常勝への足場を築こうとしている。1、2軍が連係し、指導方針を一にして「同じ野球」をやる。技も心も筋が通っている。それが黄金時代に通じる。 =敬称略=
 (編集委員)

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