相次ぐエース級のひじの故障、問題は球数ではなく、目いっぱい速い球を投げ続けること MLBが本格調査

2024年04月07日 11:47

野球

相次ぐエース級のひじの故障、問題は球数ではなく、目いっぱい速い球を投げ続けること MLBが本格調査
ガーディアンズのシェーン・ビーバー(AP) Photo By AP
 ガーディアンズが6日(日本時間7日)シェーン・ビーバー投手(28)が右ひじ側副靱帯再建術(通称トミージョン手術)を受けると発表した。ビーバーは今季2試合に登板、12回にを投げて無失点、20奪三振と打者を圧倒していたが、その後肘の不快感を訴え、MRI検査の結果、手術が必要と判明した。キース・マイスター医師が手術を担当する。ブレーブスのエース、スペンサー・ストライダー(25)も、肘の側副靱帯に損傷を負っており、トミージョン手術となる可能性が高い。ストライダーは大学生だった19年も同手術を受けており、2度目になる。マーリンズの大器、右腕のエウリー・ペレス(20)も手術を受けることが発表されたばかりだ。
 ネットサイト「ザ・リンガー」のベン・リンドバーグ記者はMLBがピッチャーのケガに関して包括的な研究を行っていると報じた。昨年10月に始まったこのプロジェクトは、医師、トレーナー、独立した研究者、アマチュア野球のコーチ、元投手、フロントなど、数多くの関係者をインタビュー、今年後半には投手たちを守るためのタスクフォースを設立することになるという。この分野での第一人者はアメリカンスポーツメディシン研究所のバイオメカニクス研究部長グレン・フライジグ博士。14年にMLBとUSAベースボールのために、「ピッチスマートガイドライン」を作成したメンバーの一人だ。「それ以来の最も組織化された、集中した取り組み」と説明している。

 問題は肘の内側にあって、上腕骨と前腕の長い骨である尺骨をつなぐ尺骨側副靱帯が裂けやすいこと。尺骨側副靱帯はトレーニングによって強化することができず、投球中に強い負荷を受けるため、繰り返し長く続けることで裂けやすくなる。近年トミージョン手術の回数は急増しており、23年はマイナーリーガーも含め263件の手術が行われた。11年の2倍以上の数字となった。14年にジェームズ・アンドリュー医師が「流行病」と宣言したが、その年よりもほぼ70%多い。開幕戦の負傷者リストに166人の選手がいたが、そのうち132人(79.5%)が投手だった。

 なぜケガが増えているのか。リンドバーグ記者は投手の分業化が進み、先発投手は長いイニングを投げなくなり、つぎつぎにリリーフ投手が出てくるようになったことが背景にあると指摘する。先発投手は以前はペース配分を考えなければならなかったが、短いイニングなら目いっぱい投げられる。トレーニング施設ドライブラインの文献には「投手がボールを目いっぱい、より速く投げようとすればするほど、より多く肩肘にストレスがかかる」としている。

 以前は投げすぎが問題だとされてきたが、近年メジャーでもマイナーでも球数は減少している。それでもケガは減らない。むしろ球数が減ったことで、投手は可能な限り速く投げようとし、百マイル超えの直球も珍しくなくなった。投手は目いっぱいの力で投げ続けることは危険だと知っているが、打者を抑えようと必死になってしまう。

 MLBは23年、ルール変更の成果で、試合時間を短縮し、ヒットを増やし、盗塁率も増やした。投手のケガをなくすのは無理としても、ルールを変えることでケガの発生率を以前のレベルに戻せないかと考える。ひとつのアイデアはベンチ入りの投手の数を減らすこと。ロブ・マンフレッドコミッショナーは「現在の13投手制限は望ましい効果をもたらしていない」と話した。12人、あるいは11人か10人になれば、投手を次々に交代させにくくなる。先発投手は長いイニングを投げる工夫が必要になり、ペース配分を考える。以前のように、抑えながら投げ、必要に応じて少し余分な力を出す。

 こうなれば副次的効果も見込める。三振が減り、打球とヒット数も増え、塁上を走者が賑わし、スリリングな逆転劇も増えるかもしれない。今季後半、タスクフォースが設立された時、どんな方向性を示されるのか、とても興味深い。

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