ソン・ソック、短編映画「夜釣り」に俳優・制作者として参加“気軽に観られるスナックムービーが増えることを願う”

2024年08月04日 19:00

写真=Stannum
俳優ソン・ソックが短編映画「夜釣り」への愛情を伝えた。

映画「夜釣り」(監督:ムン・ビョンゴン)は、俳優、制作者として参加したソン・ソックのインタビューを公開。同作は暗い夜、電気自動車の充電スタンドで展開されるミステリアスな事件を描いたヒューマンスリラーだ。

北米最大のジャンル映画祭「第28回ファンタジア国際映画祭」の国際短編競争部門で「最高編集賞」を受賞し、海外でも評価されている。

―― 映画「夜釣り」に出演したきっかけを教えてください。

ソン・ソック:現代自動車から「自動車の視線」で新しく革新的なコンテンツを作ってほしいと演出の提案がきました。コンテンツのフォーマットは何でも構わないと言われ、そこから話が始まりました。そして僕に一番身近な媒体である、映画を撮ってみるのはどうかとアイデアを出しました。演技や制作、演出を全て引き受けるより、俳優と制作者として参加し、演出は別の人と交渉してみたいと思いました。

そこで、長年の同僚で友人のムン・ビョンゴン監督を現代自動車に推薦しました。ムン・ビョンゴン監督とは長編映画の準備を計画していましたが、時間がかかる作業ですので、その前に僕たちが息を合わせる良い機会でした。このような機会はなかなかないので、色々な意味で様々な試みがしたくなりました。車載カメラで映画を撮ることは新鮮な試みで、短編で何かを撮るのも新しい方法でしたので、このような試みに現代自動車の方からも良い反応がありました。

実は、この作品を作りながら一番悩んだ点でもありますが、既存のブランドとのコラボコンテンツは広告の性格が強かったので、独立したコンテンツになることを希望しました。現代自動車が果たして僕たちが構想しているコンテンツで契約してくれるだろうか心配しましたが、会議をしながら、現代自動車も僕と同じくらい新しいことに挑戦し、試してみたいと考えているという印象を受けました。アーティストへの尊重が200%で、映画のシステムとしては現代自動車が企画と投資を、僕たちが制作と演出をしたわけです。とてもユニークで楽しい試みでした。

―― 映画「夜釣り」はソン・ソックさんが自らプロダクションを立ち上げて、制作者として参加したことも話題になりました。初めて制作を手掛けた感想はいかがですか?

ソン・ソック:自ら制作に参加する作品がこれほど早くできるとは思いませんでした。2024年1月、(株)Stannumというプロダクションを設立しましたが、6月に一つの作品を出せることになったのはとてもラッキーだったと思います。そのような背景は、ある意味で俳優のクレジットや地位がある程度影響したことは明らかだと思いますし、本当にたくさんのことを学んだきっかけになりました。今回の作品では、制作スタッフの皆様が特別に配慮してくださいました。例えば編集したりミキシングしたり、業務をする時に、僕もある意味では単なるプロダクションの代表だったり、ただ僕が出演したから制作者としてクレジットに名を連ねるのではなく、完全に最初から最後まで責任を持って経験してこそクレジットに名を連ねる資格があると思いました。スタッフの方々が、ある意味で僕の時間に合わせてくださって、僕たちは夜間にほとんど作業したり、そのような部分で僕に配慮してくださって、熱心に準備しました。

できるだけ多くの経験をしなければならないと思いましたので、この機会を通じて本当に多くのことを学びましたし、これからこの作品を通じて、制作と創作の全ての過程が容易ではないことにもう一度気づきました。単純に映画を作ることそのものも仕事ですが、その中で僕が主体的に様々な関係を作ってこそ、皆がスムーズにやっていけるはずですから、そのような経験も人間的に成熟するきっかけになったと思います。

―― 空間や設定がこれまでの韓国映画では見られなかった奇抜な想像力をもとにしていますが、その背景はどのように構想しましたか?

ソン・ソック:映画の設定に関するアイデアは、全てムン・ビョンゴン監督のものです。車載カメラで撮りましたが、単なる広告ではないので映画としての機能を考慮して、撮影技法にもかなり気を使いました。ムン・ビョンゴン監督と共にたくさん悩んだ結果、アイデアとして、警察が犯罪の現場に行ったり作戦を遂行する時、その過程をボディカメラで記録した映像に着目しました。この方法なら、車載カメラが存在する理由が映画として説得力があるのではないかと思いました。このようにして12分59秒の映画が作れたのですが、その前にどこかで見つかった、失われた、あるいは忘れられたフッテージ(未編集の映像)のようなコンセプトを取り入れようとしましたし、もちろんその後からも色々なアイデアを反映させました。カメラを7つも使わなければならなかったので、編集が入ったボディカメラのフッテージという感じで表現したくて、トーンとムードを合わせました。そして短編映画ですので、インサートやクロージングの概念がないので、ややもすれば退屈になりかねない限界点を克服できるコンセプトでした。

―― 映画館で1000ウォン(約110円)で観る“スナックムービー”は新鮮です。この言葉が誕生した背景が気になります。

ソン・ソック:僕が自ら制作して、広報、マーケティング会議にも参加して、チームのメンバーたちと最後まで悩んで要求したことが、人々に近づける僕たちの作品の性格を、一度に直観的に理解できる単語がほしいということでした。そのため長い間苦心して「スナックムービー」という言葉を作りましたが、聞いた瞬間、とても良いと思いました。ある意味で僕たちが初めて作った一つの単語です。これまで僕たちが観てきた短編映画とは違って、1000ウォンだけ払って映画館で簡単に映画が観られるだけでなく、商業的な価値を持つショートフォーム映画ですので、スナックムービーと絶妙に合うと思いました。短編映画が商業的でないという意味ではなく、ずっと文学的で作家の主張が多く入る映画とは違って、大衆に親和的で大衆のための商業映画として機能するショートフォーム映画というのが最も大きな違いです。

時間は短いですが、長編の商業映画と同じ量の、ある意味では面白さを持っていけるように制作された点が一番大きな違いではないでしょうか。多様な試みを通じて販路を開拓してみたい気持ちで最初からそれを企画したわけではありませんが、後になって僕たちの最初の出発点になったと思います。最初はそのように意図して作ったわけではありませんが、このようにして今作が生まれたことだけで意味がありますし、期待していた成果はすでにおさめたと思います。このようにして観客の皆さんが10分の映画を映画館で1000ウォンでご覧になれるスナックムービーができたと思えるだけでも、映画業界では一つの活力のもとになるという可能性を見ました。ショートフォームの映画が映画館で上映できるようになったことだけでも、すごく大きな成果だと思います。

―― もう一つの主人公である車の視線で撮影する方法について説明をお願いします。

ソン・ソック:車載カメラで人物を捉え、背景を撮って物を撮ろうとすると、アングルが固定されている状態でストーリーを伝える上で大きな制約になり得ます。そしていつも考えていることなんですけど、制約が大きいほどその中でより大きな自由があると思います。その制約を克服した時にやって来る自由はとても大きく、その自由は以前になかった新しい何かが出てくることだと思います。それだけ制約を克服するためには多くの考えとアイディアを出さなければならないので、斬新なものが出てくるはずです。

制約があったので、このような斬新な題材ができたと思います。それがなかったら、ボディカメラコンセプトの、未知の地球外生命体を捕まえる要員という設定が出てこなかったと思います。ある意味で、既存にあったキャラクターや状況が出てくるしかありませんが、創作という行為そのものが簡単ではありませんから。そのため僕は、いつもこのようなことを肯定的な限界と表現します。車載カメラの視点でこの状況を眺めることそのものが肯定的な限界と制約ですので、最初の提案の意図が良かったと思います。そして映画的に一度表現してみようと思ったことを快く受け入れてくれたことが望ましいコラボの過程だったと思います。

―― 友人でもあるムン・ビョンゴン監督とのコラボはいかがでしたか?

ソン・ソック:ムン・ビョンゴン監督とは、映画を撮影する前から近い関係で、色々と意見を交わしましたが、映画的に表現する中でもキャラクターが一番興味深い要素であることが重要だと思いました。この作品はカメラを積極的に動かさないので、キャラクターの特徴をきちんとキャッチしなければなりませんでした。そのため、主人公がまるで正体不明の外国から来たベテラン戦士のようでもあり、ウエスタンカウボーイのようでもあります。あえてミステリーやサスペンス的な面を前半に入れました。後半のアクションが出てくる前、キャラクターの正体が最初は曖昧であってほしいというのが共通の意見でした。そして衣装や台詞にも気を使いました。

海外の観客のためにも、台詞を最小限にとどめるべきだと思いました。ビジュアル的にはユニークなキャラクターとアクション、そしてこの要員が戦う相手も動物や人間ではなく、地球外生命体にしました。このような部分が映画の面白さのための要素に発展し、キャラクターの構成についてたくさん話しました。何よりも時間と努力を費やした部分は、やはりこれまでになかったアクションを見せるところでした。特に、釣り竿でするアクションは聞いたことがなかったからです。そして、その釣り竿の先には何があるのかも出てこないので、これらを限界点に設定しました。そのためアクションの動線が1:1で戦うアクションではなく、上にも飛んでぶつかって、何かを突き抜けなければならない方法を選びました。そうして、車を中間に置いてできるアクションはすべてやったと思います。

アクションを組むことにも主眼を置きました。何よりも重要だったことの一つはやはりCGでした。完成度の面でCGは非常に重要でしたが、制作に参加したマケンプロダクションの代表がドイツと縁があって、ドイツのCGチームとコラボすることになりました。このプロジェクトは、サウンドミキシングはイギリスで、CGはドイツで行いました。特にCGはドキュメンタリーのようにリアルでありながら、ファンタジー的なところもすべて盛り込まなければならなかったので、心血を注ぎました。

――破格の設定のもう一つが、実はほぼ一人芝居で、演劇の魅力も感じられるところですが、どのように準備しましたか?

ソン・ソック:海外で初めて演技と公演を始めましたが、その時僕が初めてチャレンジした4~5作の公演が全て一人芝居でした。そのため「夜釣り」のフォーマットには慣れていました。演技をする人が何人出るかは、それほど重要ではないと思います。話を引っ張っていく主体は普通一人ですので、その一人の後ろに立ってその人の視線でその状況を経験していくことがほとんどですので、ほとんどの映画はすべて一人芝居の形態だと考えています。

――サンダンス映画祭で、海外の関係者から好評を得たと言われました。その時の雰囲気はいかがでしたか?

ソン・ソック:サンダンス映画祭の特性上、それを楽しむ方々が集まりましたが、ハリウッドで著名な関係者の方々や有名な方々が多数参加し、映画を観て多くのフィードバックをもらいました。映画についての質問もたくさんしてくれて、彼らもこの作品のようなフォーマットを試みたいという話をしてくれました。その中で「ワイルド・スピード」シリーズにも出演した俳優のサン・カンさんが、車を活用してこのようなアクションを見せるのが本当に新鮮で素敵だと話してくれました。世界的なカーチェイスアクションの大家であるサン・カンさんが映画について良い話をしてくれて感動しましたし、今でも忘れられない瞬間です。

―― スナックムービーが映画界に与える影響や望みはありますか?

ソン・ソック:これからも映画館で観る2時間前後の長編映画は続くと思います。しかし、映画館も変わらなければならない過渡期にあることは明らかです。僕は、2時間の伝統的なフォーマットはこれからも維持されると共に、人々が持つ映画館へのイメージが多角化することに目標があると思います。また、第2の、第3のスナックムービーが出てきて、僕やムン・ビョンゴン監督のようなアーティストが現代自動車のような企業とまた別の形態のコラボをして、別のフォーマットのコンテンツが映画館で上映されて、その結果、人々に映画館に行くのが楽しいと思ってもらうことが一番大きな目標です。もちろん、良いシナリオがあってほしいですが、俳優としてもう少し大きな希望は、今回のことをきっかけに新たなインスピレーションを受けた他のアーティストが、別の形のスナックムービーを披露することです。

―― 最後に、観客へ一言お願いします。

ソン・ソック:映画そのものも面白いですが、僕が申し上げたいのは、恋人とデートをするとしても、友達と遊びに行くとしても、映画館で10分という時間を経験できる新しいエンターテインメントですので、その経験そのものを楽しんでほしいです。例えば、もし友達と10分映画を観たら、これまでとは違って前後にする経験がまた変わってくるじゃないですか。小さいサイズのポップコーンを持ってスナックムービーを観て、友達と別の約束をすることもできますし、また異なる経験になるはずです。僕たちがスナックムービーというコンテンツを楽しむその日の経験を、さらに楽しんでほしいです。映画を楽しく観るのは当然ですが、スナックムービーという映画コンテンツの新しいフォーマットが、映画界に活力を吹き込んだら嬉しいです。スナックムービー「夜釣り」を観る一日が楽しく新鮮な思い出になってほしいと願っています。ぜひ注目して愛してほしいです。

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