“康介さんにメダルを”北島、感謝の3大会連続メダル
2012年08月06日 06:00
五輪
プールの外でこんなに興奮する北島をこれまで見たことはない。最終泳者の藤井がタッチし、電光掲示板で2位を確認すると、強く握りしめた両拳を何度も振り上げた。アテネ五輪からともに戦い続けている松田、新世代のエース入江と次々と抱き合った。競泳競技の最終レースで今大会自身初のメダル獲得、それもメドレーリレー初の銀。その喜びは格別だった。
「こればっかりはみんなのおかげですよ。(銀は)想像してなかったから喜んだ。(戦力予想では)3番手か4番手だった」
100メートル背泳ぎ銅メダルの第1泳者・入江がトップの米国に0秒34差の2位で帰ってくると、第2泳者の北島は勢いよく飛び込んだ。かつての盟友ハンセンを猛然を追いかけた。ラスト10メートルで追い抜き、0秒21差のトップで第3泳者の松田につないだ。松田も宿敵フェルプスに逆転を許したが、必死に食らいついた。2位で引き継いだ藤井はオーストラリアの猛追に並ばれかけたが、最後は0秒32差で振り切った。
北島のために、チームはまとまった。レース前、松田と入江と藤井の3人は「康介さんを手ぶらで帰らすわけにはいかないぞ」と話し合った。北島本人には伝えていなかったが、これまで頼りっぱなしだった北島への恩返しの思いで一つになっていた。
遠慮なく助言も送った。リレーでは腕を振って、タイミングを計って、勢いよく飛び込むが、予選では北島が前方ではなく上方に飛び出していた。悪癖に気づいた藤井は「(腕を)胸の前で止めた方がいいですよ」と練習中アドバイスを送ると、北島も素直に耳を傾けた。
そんな仲間たちの熱い思いに応えた。通常の100メートルのレースより約0・5秒速いと言われる引き継ぎタイムでトップの58秒64をマーク。6日前の100メートル決勝の59秒79よりも大幅にタイムを上げた。「足引っ張れねぇなぁと思っていた。チームに貢献できたのがうれしい」と胸をなで下ろした。
個人種目の3連覇はかなわなかったが、3大会連続のメダルは守った。これが最後の五輪になるのかは、まだ本人も分からない。「次どういうステージに立って、何を目標に向かっていくのかはもう一回考える必要がある」。どんな結論を出すにしても、今回の4度目の五輪は北島にとって思い出深い大会になるだろう。最後に意地を見せた29歳は「十分楽しんだでしょう。僕はもう何も言うことないです」と言って笑った。